4-4 ヤればいいんです

「お2人とも恋をしていないからです!」


 現在魔王城の裏庭でルーナの考えた術式をソフィに試してもらっていたところなのだが……唐突にソフィがそんなことを言い出したのだった。

 もちろん意味の分からない俺とルーナは顔を見合わせてからともに首を傾けた。


「――何言ってるのソフィ」


 そして、呆れつつルーナがソフィに声をかける。するとルーナ以上に呆れ表情でソフィが話し出した。


「――はぁ。お子ちゃまにはわからなかったですか。説明は難しいですね」

「はい!?お子ちゃま!?」


 ソフィのつぶやきでいつもの雰囲気に戻る。また言い合いが始まりそうだったが。ソフィは言い合いではなくすぐに話を再開した。


「ではお伺いします。お2人。他者と肉体関係を持ったことは?」


 そしていきなりぶっ飛んだ質問をしてきたのだった。


「あ、あるわけないじゃん!って何をいきなり言い出だすわけ!?」

「――ないですが……?」


 ソフィの質問にルーナは少し恥ずかしそうにしつつも即答えていいた。とりあえずルーナは未経験。って、それはおいておき。もちろん俺もない。なので俺もルーナに続くように答えた。


「――あっ、セルジオもないんだ……ふーん」


 すると、なぜかルーナが俺を見つつ何やら馬鹿に?してきた様子だったが。待て待て。自分も未経験だろうが。と言ってやりたかったが。もちろんそんなことは言えないので――などと俺が思っていると。ソフィさんがびしっとこちらに指をさしてきた。表情は何やら自信満々といったものだった。って、ホント今はなんの話をしているのだ?


「それが原因です!」

「「いやいや……」」


 再度ハモる俺とルーナ。さすがにそれは関係ないだろう。あったらびっくりだろう。どうやらそれは特に話さずともルーナと同じ意見だったらしい。


「あのさ。ソフィが変態なのは今に始まったことじゃないけどさ。そんなの理由なわけないでしょうが」


 すぐにルーナがソフィへと言った。しかしソフィはまだ自信満々?に話を続けた。


「では、お2人。キスしたことは?」

「だ、だからー」

「――」


 これどこまで続くのだろうか?恥ずかしくなってきたな。ちなみに、ルーナもさらに少し恥ずかしそうにしている。ちなみに小声で『――あるわけないし』とつぶやいていたのは――聞こえなかったことにした。


「まあ聞くまでもないですね。今の表情からしてないでしょう」

「くー」


 もちろん正解ですが――ホント何?この時間である。


「はっきり言います。ルーナ様は長年引きこもり。学校も行っていませんね?そしてセルジオ様は学校へは行っていたそうですが。魔術が使えないということで、友人を作るより。1人で勉強を選んでいたと」


 そしてソフィがどこで調べた――というか。そういえば前にそんな話をしたような――と、俺が思っている間に話しは進んでいた。


「何か悪い?」


 ちょっと不機嫌そうにルーナがつぶやく。


「多くの人が気が付いていませんが。他者と肉体的に関わることで魔力が混ざります」

「そうなの?セルジオ」

「いや――」


 そんな話も初めて聞いた。そもそも魔力というのは自分の中で生まれ。自分しか使えないものと思っていた。しかし今のソフィの話の雰囲気からすると――違う様子だ。


「混ざるのです。しかしそれは普通なら気が付かないうちに混ざっており。今まで誰も気が付いていないのです。お2人は愛を知らない。ルーナ様は無能で即飛ばされ――」

「言い方!そうだけど――」

「セルジオ様は――孤児でしたね?」

「あっ。はい。ほとんど孤児と言っていいかと思います」


 もちろん家族と過ごしいていた期間もあるがそれはかなり短いので、孤児でも間違いはないため俺はすぐに答えた。するとソフィはそのまま話を続けた。


「多くの人は子供のころにまず自然と家族間で魔力が混ざるのだと思います」

「家族内で肉体関係はないでしょが!」

「ルーナ様変態ですか?頭大丈夫ですか?」

「はい?!」

「ルーナ様が思うようなことは、家族間ではありませんよ?」

「ソフィが言ったんでしょうが!」

「とにかく」

「ちょっと!」


 ルーナ。全く相手にされておらず。話がどんどん進んでいく。ちなみにルーナは耳まで真っ赤である。

 

「とにかくです。普通なら幼少期などから自然と他者の魔力と間接的に混ざるのです」

「――そうなの?セルジオ?」

「なんともです」


 少し無視されふてくされた感じのルーナに再度聞かれたから俺は答えたが。俺もあまりピンとはきていなかった。

 でも少し考えてみると。確かに家族間なら同じものを使ったり食べ物を一緒に食べたりで少しだが。間接的な接点というのか。そういうことがあってもおかしくないだろう。

 俺の場合だと、家族で住んでいた時のことはあまり覚えてないが。そのあとの孤児が集められたところでは、普通ならいろいろ関わりそうなものだが。俺は基本1人を貫き通していたし。誰かと仲良くなることもなく。またそれもあって食事とかの時でも1人だったので――間接的でもそういう他者とのか関りはなかった方だと思う。

 そのほかも、ホント1人で籠っていたので、誰かとそのような接触はなかったかもしれない。 

 俺がそんなことを思い出している間もソフィの話は続く。


「だから普通に生活していた人は、ある程度の年齢になればいろいろな魔力の混ざった状態になっているのです。というかそれが普通なのです」

「ちょ、ソフィそれだと私たちが普通の生活していないみたいじゃない」

「してるんですか?」

「「……」」


 ソフィに言われて考える俺とルーナ普通の生活して……ないか?いやしてない?あれ……?


「とにかく。私の知る情報では、他者と混ざっていない魔力は濃いのです」

「魔力が?」


 今のルーナは違う意味にとらえた気が俺はふとした。

 そして俺が気が付くということはもちろんソフィさんも気が付いたようで、すぐに呆れた表情をして頭を抱えていた。


「――ルーナ様。馬鹿は休み休み言ってください」

「ば。馬鹿!?」


 悲鳴に近い声をあげるルーナ。にしてもどんどんルーナが次期魔王に見えなくなってきた。


「濃度がのです。馬鹿ですか?あー、馬鹿でしたね」

「ば。馬鹿言う方が馬鹿なのよ!って、何回言うの!」

「なら、無能ですね」

「ソフィ。やっぱり私の悪口言いたいだけでしょう」

「ええ」


 今日も素直に認めたよ。さすがに俺一瞬ずっこけそうになったが。何とか耐えた。


「だ・か・ら。素直に認めるな!」

「とにかくです」

「無理矢理話を変えるな!」


 ルーナが騒いでいるが。ソフィさんは無視して話を進めた。


「他者との関りがなかった人の魔力は濃く。濃いと魔力回路の中をスムーズに流れないと考えられます。まあ極端な事例だけだと思いますが。こういうこと聞いたことありませんか?大人になるとスムーズに魔力をコントロールできる。それは魔力濃度が変わり。流れやすくなったから。大人になると誰しもをしますよね?」

「あの――ソフィさん?でもさすがにそのようなことが本当にあるのなら、もっと言われているのでは?それこそ学校とかで習ってもおかしくないのでは?でも今のところそのような教育はなかったかと。だからあまり信憑性は――」

「だから。セルジオ様もお馬鹿ですか?」

「――」


 俺も馬鹿と言われてしまった。軽くショック。


「そもそもこの世界では魔術を使えて当たり前ですよね?」

「――そう言われていますね」


 俺は使えないが。あと、ルーナも。でも基本だれでも使えて当たり前がこの世界の常識だ。


「つまり。普通に生活していれば、何らかしら他者と関わるのが普通なのです。まず子供のころで家族と間接的に。それでも十分な場合はあるでしょう。1人1人魔力は違うと言われていますしい。さらに、大人になれば家族以外の方と関りを持ちますよね?学校とかではそういう話多かったのではないですか?1人くらい気になる子いませんでしたか?まあお2人には難しい聞くだけ無駄なことかもしれませんが。ちなみにですが。私の初恋は遠い昔。初体験もかなり早く。その後はそれはそれは派手に――そして今も複数の……しかし!無能の相手をしているため。なかなか時間がなく。最近では寂しい――」

「そこ!いきなり変な話始めるな!」


 勝手にいろいろ言われた俺たち、ちょっと内容にポカーンとしていいて反応が遅れたが。ルーナが話を止めてくれた。あのままだとソフィの私生活を赤裸々に聞くはめになりそうだったからな。大雑把にもう聞いちゃった気もするが……。 

 でもソフィの私生活は知らないので知った方がよかったか?いや、今の雰囲気重要なことは言わない感じだったから止めて正解だろう。


「ルーナ様には過激でしたか。ふふっ。では続きは後日みっちりと――」

「笑うな!あといらないから!」


 ホント、俺たちは、何の話をしているのだろうか。

 でも騒ぎつつも話を聞いていると、一応ソフィが言いたいことはわかった気はしてきていた。


「とにかくです。あなた方2人は極端に他者との関りがなかった例なのですよ。もしかすると、他にも魔術が使えない方がいるのかもしれませんが。今のところはそのような報告はありません――」


 ソフィさんは自信満々で話続けている。あと、そのような情報がどうしてソフィに?やはりソフィすごい人なのでは?


「ソフィさんが何者なのか気になってきたよ」


 そんな中で俺がボソッとつぶやくと。ルーナの聞こえたのか。返してくれた。


「確かに、私も。あと、ちょっと怖くなってきた」

「――身元確認とかしてないんですか?」

「私にそんな権限あるわけないでしょうが」

「ここの離れの主では?」

「表向きにはなの。私何も権限ないわよ。ソフィの前に人も急に辞めちゃうし」

「――なるほど」


 知ってはいたが。やはりルーナ様。俺とソフィ以外に何か言える立場ではないらしい。


「そこ。雑談するならとっととイチャイチャしなさい」

「ちょ、なに言い出すわけ!?」


 ほんとルーナのいう通りだった。先ほどからソフィは、いろいろいろいろぶっ飛んだことを言ってくる。


「とにかくです。とっとと解決するために言いますが。お2人肉体関係を持ってみてはいかがですか?」

「「はいぃぃぃぃぃ!?」」


 さらにぶっ飛んだことをソフィが言い出だしたため。今日何度目だろうか。俺とルーナの声が。驚きの声が重なったのだった。ちなみに先ほどからそこそこ騒いでいるが。この魔王城の離れ。ホント町から離れているからか誰かに見られるということはなかった。余談だが。今ボロボロの裏庭は壁があるわけではないので。外から丸見えなので――これ町の人が来たら驚くだろう。という俺の余計な思いはおいておき。


 そもそもソフィは、どこの誰かわからない奴と、次期魔王に何をさせようとしているのか。


「わかりませんでしたか?セックスですよ?知りませんか?子作りと言った方がよろしいですか?繁殖活動と言った方がいいですか?まさか一般教養がないとは――にしても息はピッタリですね」

「ちょちょ、ソフィはな、な、何をい。言い出すわけ?!」


 かなり動揺しているのはルーナ。多分だが全身が赤くなっている気がする。そういえばルーナはずっと照れている?みたいだが――大丈夫だろうか?そのうち湯気でも出てきそうなのだが……ちなみに俺もそこそこ恥ずかしい思いをしているが。


「ルーナ様。こんなことでそんなに動揺されましてもね。この世界普通の大人なら、気に入った相手と、肉体関係などどこでも生まれていますよ?今この瞬間でもはじけているお方はたくさん。それは昼夜問わず町の中で頻繁に――」

「そんな破廉恥な世の中じゃないくらい知っているわよ!」

「ちっ」

「ちょ、舌打ち。舌打ちしたでしょ!ソフィ!」

「はぁ。だから、あなた方お2人は他者と関わることが極端になかったことで、ご自身の身体の中で濃い濃度の魔力が詰まっていると考えられます。わかりましたか?」

「し、信じられないから。そんな意味わかんない話」

「お2人はこの年代まで何もなかったと考えると、かなり濃くなっていると思われますので、1度や2度くらいでは何も変わらないかもしれませんが」

「話を聞け!」

「できることなら毎日ですね。毎日派手にヤってください」

「だからなんの話をしているんだ!」

「ルーナ様。うるさいです」


 誰かこの2人止めて。という俺の思いは――誰にも届いていないであろう。めっちゃ恥ずかしくなってきたぞ。この場を離れたい……。


「ソフィが適当なこと言うからでしょうが!」

「なら実験しますか?」

「ちょ、し、しないからね?」


 ルーナがソフィから距離を取る。あと、俺からも少し離れた。いや、大丈夫です。何かしようとかマジで考えてませんから。俺もう少し生きたいですから。


「さすがに外でやらせませんよ?」

「室内だったらさせるつもりだったのか!」


 ルーナが大噴火しそうな雰囲気である。さすがに倒れそうで心配になってきた。


「とりあえず、外なのでキスを」

「だから!」

「それもできませんか?私でもいいかもしれませんが。ルーナ様初めては異性の方がよろしいかと」


 不敵な笑みを浮かべるソフィ――いや楽しみすぎだろ。


「だから勝手にいろいろ言うな!」

「ここまで恥ずかしがるとは――なら間接キスでもしてください。一緒のコップでも使えばいいでしょう。多少効果はありますから」

「だから!」

「はぁ、ルーナ様。ルーナ様は寝ている時に暑くて服を脱ぎますね?」

「な。何なのよ、いきなり」

「脱ぎますね」

「――」

「そしてセルジオ様はここに来る前は路地裏生活をしていた」

「えっ――セルジオそんな生活……しいてたの?」


 すると、急に落ち着いたのか。少し驚いた様子でこちらを見てルーナが声をかけてきた。


「あっ。ルーナにはちゃんと話したことなかったかも――って、確かにここに来るまでの俺はしばらくはそんな生活でしたよ」

「セルジオ……」


 これはどのように判断するべきなのか。少し泣きそう?な感じでルーナが名前を呼んできたが。ソフィがまだ話の途中ということで口を挟んできた。


「ルーナ様の事はちょっとおいておき。セルジオ様は路地裏生活でも凍えなかったのではないですか?」

「えっ――」


 ソフィに言われて少し考える俺。そういえば俺が路上生活をしていた時って――。


「多分ですが。ルーナ様はかなりの魔力をため込んでいる。それは血筋によるものでしょう。セルジオ様に関しては、ルーナ様ほどではないと思いますが。それなりの魔力をためている。体内で魔力が長年溜まっているお2人だから。ルーナ様は寝る時暑くなり服をいつも脱ぐ。そしてセルジオ様は、魔術が使えない中。路地裏生活をしていても――生き伸びた。そうは考えられないですか?」

「「――」」


 もしだ。魔力が体内に多いと力がみなぎるではないが。熱を発するのなら。今の理屈はあっているのかもしれない。

 考えてみれば、路地裏での生活の時はかなり寒い時もあった。もちろん寒かった。でも俺はそんな中で毛布に包まるなど暖を取らなかったのに生きていた。それは――そういうことなのだろうか?

 俺が考えている間。ルーナも何か考えている様子だった。


「わかりましたか?本当はお2人で秘密の特訓とか言うことを始めたので、そのうち肉体関係を持つかと思ったのですが、なかなか進まないので、仕方なく私が手を貸したのです」


 やっぱりめちゃくちゃなことを言われている気がするが。今はいろいろな情報がありすぎで返事をすることもできなかった俺とルーナ。

 

「セルジオ様」

「――えっ、あ、はい?」

「このコップの水をお飲みください」


 するといつの間にか。ソフィがコップを準備していた。そして準備してあった飲み物の水を注いだ。


「――まさかですが。中に毒は――ないですよね?」

「飲まなければそのうち間違って入れるかもしれません」

「――」


 怖いから。飲みますよ飲みますから――って、なんで水?

 

「とりあえず飲んでください。セルジオ様」


 急かされるように俺はソフィからコップを受け取り口をつけた。ちなみに普通の水だった。するとすぐにコップがソフィに回収された。


「はい。では今セルジオ様が飲んだところ。そこに口をつけてルーナ様も残りの水を飲んでください」


 そしてそのままルーナに渡したのだ。


「は。はい!?」

「間接キスです」

「ちょ、ちょい」


 俺が何が起こっている?とか思っている間。ルーナもなんで!?と言った感じで慌てていたがソフィは至って落ち着いた様子だった。


「間接キスもできないんですか?なら私がぶちゅーとしましょうか?」

「それの方がなんか嫌!」

「ならどうぞ」

「……わかったわよ。どうせ何もないし」


 するとルーナは恥ずかしそうに、先ほどまで俺が持っていたコップをソフィから受け取り――飲んだ。なんか――恥ずかしいんですけど。


「……」


 ちなみにルーナは、早く終わらせたかったのか一気飲みだった。

 そして今気が付いたこと。これって、実験なら、ルーナが飲んで俺が飲んだ方がよかったのでは?

 現状俺は間接キスしたことになっていない。ルーナがそれの方がよかったのでは?などと思っていると。


「――な。何もないじゃない。単なる水だし」


 恥ずかしそうにソフィに文句を言っていた。


「そんな簡単に効果があればびっくりですよ」

「だ、騙したでしょ!」

「さあ?」

「ソフィ!」


 そして、俺の隣ではいつも通りの大騒ぎが始まったのだった――が。


「――あ、あれぇ……?」

「えっ――ルーナ!?」


 水を飲んだ後、しばらくソフィと言い合いをしていたルーナが急に力が抜けたように後ろに倒れこみ地面にペタンと座り込んだ。俺は慌てて駆け寄る。

 ちなみに一番近くに居たソフィは、その様子を見て満面の笑みを作っていた。

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