4-3 先生最強説
ルーナが考えた術式をソフィが行う。今日の勉強場所は魔王城の離れの裏庭だった。意外と広い敷地がある。離れといえど、一応魔王城か。
簡単そうに聞こえるかもしれないが。自分の得意不得意が普通はあるので、難しいことだ。人間界の学校でも各得意分野の先生が居たくらいだ。1人ですべてはホント一握りくらいの人しかいない。
そして初級魔術ならまだ一人でも何とかなる場合があるが。今のルーナは中級以上を使いたいため。ソフィに試してほしいのは基本中級魔術以上だ。果たしてソフィがどこまで使えるのかと俺も思っていたら……。
――ドッカン!
魔術を発動したソフィさんの数メートル先でそこそこ大きな爆発が起こる。地面の土が宙に舞って――落ちてきた。
「「……」」
「うん。悪くない術式ですね。次は――」
ちなみにソフィはルーナの書いた魔術の束を持ちつつ魔術を発動している。俺とルーナはソフィの後ろで待機だ。
――ズズズズズッ……。
次にソフィが魔術を発動すると、地面が少し揺れ出し――次の瞬間土が盛り上がり。ソフィの正面に2メートルほどの一時的な壁ができた。
「「……」」
「これはこれは。少し規模が小さいですが。自分を守るなら。良い手ですね。しかしこれは脆い。他の魔術ともっと組み合わせれば強力になるでしょう。そしてお次は――剣に付与する形ですね」
するとソフィは準備していた剣を手に取った。
――ボフッ。
そしてソフィがさっと魔術を発動すると剣が炎をまとう。ちなみに――中級以上の魔術なのだが。ソフィが魔術を発動するとき魔方陣らしき物は見えない。
「「……」」
「ちょっと心もとないですね。私ならここは風をメインに――」
するとソフィが一度ルーナの考えた術式を解除して――再度魔術を発動。今度は魔方陣が少し見えてから――。
――スパン。
「「ひっ!?」」
剣に風がまとった?ように見えた瞬間。ソフィが剣を振る。すると目の前に先ほど作りあった土の壁が――吹き飛んだ。いや、正確に言うと風をまとった剣が土を切った?どういうものだったのかは一瞬だけでは、俺にはわからなかったが。多分刃で切ったというより。刃の周りにできた風。空気?とにかく剣にまとっていた風が土を吹き飛ばすように切ったのだった。
ちなみに、俺とルーナに関しては、目の前でくり広げられる光景に若干引いいた。
一応ほとんどルーナが考えた術式だったのだが。ソフィが完璧に使いこなしていたからだ。
はじめにも言ったように普通なら不得意分野ならルーナの考えた術式をソフィが発動すると弱くなることがあるかと思っていたが。今のところほとんど問題なくソフィは使いこなしている。
自慢ではないのだが――俺結構。そこそこ難しい術式をルーナに教えていたので、中級以上の魔術だったはずなのだが……ソフィ。ほとんど魔方陣すら見せずに発動させてみせた。つまりソフィは中級魔術レベルなら各方面可能……ソフィの実力が今まで不明だったが。これ普通に上位。下手したら――上級魔術使いの可能性が浮上したのだった。
簡単に言えば、ソフィはいつでも俺やルーナを消すことができるということ――恐ろしい。
と、とにかく。ソフィが圧倒的力を見せてきたのだった。
★
「まあまあですね。本当はこれが使えれば苦労することもないと思うのですが――」
一通りルーナの考えた術式をソフィが行った後。こちらを見つつソフィがつぶやいた。
ちなみに裏庭は――ボロボロ。穴はあいているわ。草木は燃えた後があるわ。水たまりができているわ。これ――片付け誰がするのだろうか?などと俺が思っていると。
「ば。バケモノ!」
ルーナが叫んだ。確かにバケモノで間違いはない気がした。
「ルーナ様。言うようになりましたね」
するとソフィはさっと魔術。多分風の魔術をルーナに。えっ?いやいやダメでしょ。そんなのしたらルーナ死にますよ?などと俺が思った瞬間だった。
ぴゅー。と、局地的突風が発生。主にルーナの周りだけ風が舞う。
「――ふぇ?……きゃああああっ」
すると、今日も黒のワンピース。そういえばルーナはこれがお決まりなのか。次期魔王の制服?みたいなものなのかはわからないが。いつも通りの同じ服装だったのだが(ちなみに同じ黒のワンピースは数着ある)。そのルーナのワンピースが風により勢いよくめくれる。
とっさにルーナがワンピースを押さえたのでギリギリ。ギリギリ下着は見えていないが。太もも。ほぼ付け根まで丸見えだ。俺はそっと視線を2人から離す。
「ほらほら、バケモノ相手で何かしないとすべて吹き飛ばされますよ。ほら。ほら」
ソフィは楽しそうに魔術を使いながらルーナに話している。
「ちょ、この変態!やめろ!」
もちろんルーナは必死にワンピースを押さえている。と、思われる。ちなみに局地的なので俺のところは無風。ルーナの所だけ暴風だと思われる。風の音は一応聞こえている。
ちなみに、魔術を発動するためには魔力がいるということは前にも言ったと思うが。魔力は無限ではない。それぞれの魔力タンク内の量にもよるが。バンバン魔術を出せるいうわけではないはずだ。
数回初級魔術を使うだけでへばる者もいいれば。初級ならある程度使える者もいる。
中級、上級になると普段から使っていない人が使うとそれこそ数回で魔力切れ。全く動けなくなることもある。
そして一度使うと回復にはそこそこ時間がかかる。ちなみに、魔力の回復方法はいろいろあり。食べ物からとか自然回復といろいろあるが。基本瞬時に回復はない。
そりゃ王。勇者。魔王レベルになればそもそもの魔力量が多いから――だが。ここに居るのは普通の人のはず。なのにソフィは、先ほどまで中級以上の技を数発。そしてそれから特に休むことなく。
「きゃあああ。ちょっと!やめろ!やめろ!風止めろ!」
未だにルーナに風の魔術を使っている。
「ルーナ様。風にすら勝てないのですが?ならもう少し力を入れればすべて吹き飛びそうですね」
「やめろぉぉぉぉ!!」
ルーナに対して行っている魔術は多分初級の風の魔術だが。でもソフィは局地的に発動しているので、そこそこの術式を構築して発動しているはずだ。それなのに、全く疲れる。止める様子も今のところない。ちらりと2人の方を確認すると――今もルーナのワンピースを翻している。かなり際どい所まで丸見えだったため俺は再度視線を逸らす。
そして思う。この人――。
ソフィは本当にバケモノかもしれない。魔術量が半端ないことが分かったのだった。
「やめ。謝る!謝るから!」
「弱っちいい次期魔王様の事で」
すると静かになった。どうやらソフィが魔術を解除したらしい。
「――はぁ――はぁ……」
そして俺が2人の方を見ると。なぜか魔術を発動していないはずのルーナ様がぐったり。地面に座り込んでいた。
一方大量の魔術を発動していたはずのソフィがピンピンしているという状況だった。いやいや普通は逆なのだが……。
ほんとバケモノやん。
驚きやん。
やん。ってどこの言葉?
俺がちょっと無駄なことを頭の中でいろいろ考えていると。ソフィが話し出した。
「術式の知識に関しては、まあまあのレベルになりましいたね」
「鬼――」
「ルーナ様?溺れたいですか?焼かれますか?生き埋めがいいですか?」
「選択肢が恐怖!」
ルーナが慌てて俺の方に避難してきたが。ルーナよ。俺のところに来ても2人とも無能なのですが……瞬殺ですよ?
「ならお静かに。あと、セルジオ様はもとから知識量に関しては申し分ないと思っておりましたが。本当にすごい知識量ですね。」
「あっ。ありがとうございます」
「しかし、お2人は全く魔術が発動できない」
「「――」」
とまあ、それが現在の致命的なところだ。
俺も知識はある。でもなぜか魔術が全く使えない。体内に魔力がないのか。何がどうして何もできないいのかはわからないが――発動しないのだ。普通なら術式を構築すれば発動しているはずなのに……。
「お2人は基礎はあります。あとはきっかけですね」
「あの――ソフィさん?」
「なんですか?セルジオ様」
「きっかけ――というより。そもそも俺たち魔力があるのかないのか」
「ありますよ?」
「「えっ?」」
さらっと答えるソフィに俺とルーナが驚く。
「魔力がない人などこの世界には居ないのです」
「でも――」
「使えないじゃん」
「まあ、そろそろですかね。では、魔力回路を改善。修繕をしましょう」
すると、ソフィがそんなことを言いだしたのだった。
魔力回路を改善?修繕?どういうことだ?俺には全くわからないことだった。
魔力回路とは血液と同じで全身に魔力を送るために体内にあるとされているもの。それは目では見ることができない。なお、魔力回路は壊れない。年をとっても衰えることはないと言われているが――改善?修繕?俺の頭の中では?マークが多数浮かぶ。
「ソフィ?何言ってるの?」
それはルーナも同じだったらしい。
「お2人が魔術を使えないのは、魔力回路にトラブルが起きていると考えられます」
「――セルジオそんなことあるの?」
「いや、初めて聞きましたね」
「あります。私が思うにお2人は魔力はあります。でもそれを出すことができない。または出ているが――途中で詰まっていると考えられます」
「そんなことあるの?セルジオ」
「再度同じ答えとなりますが――初めて聞きました」
ソフィが言い出したことに関しては俺は初めての事ばかりだった。なのでルーナに確認されても同じ返事しかできない俺だった。
「あるのです」
「「……」」
すると再度力強くソフィが言った。俺とルーナは?マークの祭りだ。
「多くの方は知らず知らずのうちにきっかけを得ていて、今まで気が付かなかったのでしょう」
「「?」」
するとソフィが話し出したが。ソフィの言うことにいまいちピント来ない俺。ちなみにルーナも不思議そうな顔をしている。
「まだわかりませんか。私はお2人のことを調べました」
するとどこからかルーナが紙の束を出した。いやいやどこから?だったが。そんなことを聞ける雰囲気ではなかった。
「勝手に――」
「ルーナ様お黙り」
「……ちょ、私の方が上なんだけど」
確かにそうだが――ここではどうもソフィが上らしい。俺がそんなことを思っているとソフィは話を続けた。
「とにかくです。お2人にはある共通点があります」
「「共通点――?あっ。魔術が使えない」」
ソフィの声にハモった俺とルーナ。というかその共通点しかないからかすぐに浮かんだのだが――ソフィの顔は正解とは言っていなかった。
「ほかにあります」
「――?」
「ほか?」
頭の上に再度?マークをたくさん浮かべる俺とルーナ。
「それは――」
「「……」」
何故か焦らすソフィ。すると――。
「お2人とも恋をしていないからです!」
「「……」」
ぴしっとしたソフィさんの声が裏庭に響いたのだった。
――うん?
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