第十五話文化祭当日
文化祭当日の朝、ほたるとゆりかは早めの時間に登校していた。
だが向かうのはいつもの教室ではなく茶道部の和室であった。
和室に入ると部員が着物を着て文化祭の準備をしていた。
「あれ今日って着物必要だったんですか!?」
ほたるが焦りながら先生に聞く。
「そんなことないですよ、あなたの着物はこれですよはいどうぞ」
貫禄のある声でそう言うと、桜柄の赤い着物をほたるに差し出した。
「ゆりかさん! あなたのはこれです」
そう言われゆりかが手渡されたのは美しい鳥があしらわれた青い着物であった。
「今日の文化祭ではこの着物を着て活動してください、文化祭が終わったら放課後回収します」
「「はい」」
そう言われたほたるとゆりかは更衣室で着物へと着替えた。
「かわいいね~着物」
「うん、ほたるちゃん着物似合っていいな~かわいくて」
「ゆりかちゃんも似合ってるって」
「そうかな~」
「そういえば制服にいつ着替えればいいかな?」
ほたるは疑問に思ったのでゆりかに聞いてみた。
「わたしたちは午後からクラスの店番だから午前中は着物ですごしていいんじゃないかな」
「そうだね、そうしよう」
「じゃあ茶道部の準備しよう、そのために来たんだし!」
「うん」
二人は茶道部の活動のための準備を着々と進めていく。
しばらくすると登校時間となり準備の必要などが無い生徒達が登校してきた。
すると先生が話し始めた。
「準備お疲れ様です。あとは私がやるのでみなさんは教室に戻って下さい、くれぐれも店番の時間を忘れないように」
そう言われほたるたちは教室へと戻った。
教室に入るともうほとんどの生徒が登校していて、にちかとめいひも登校していた。
するとにちかが教室の中を走って近寄って来た。
「ほたるとゆりか着物かわいいな~どうしたんだ?」
「茶道部で先生が用意してくれたんだ! いいでしょ~」
にちかに遅れてめいひも近寄ってきた。
「かわいいね~ 茶道部いいな、着物着れて」
「いいでしょ~」
ほたるは相変わらず着物をめいひにも自慢していた。
その後も担任の先生やクラスメイトから着物について聞かれ自慢するほたるなのであった。
ついに待ちに待った文化祭が始まり学校中にさまざまな人が入ってきて賑やかになっていった。
にちかとめいひはクラスの店番のため最初は一緒に周れないため、ほたるはゆりかと出し物を周ることになった。
「それじゃあどこ行こうか?」
廊下を歩いていると出し物の宣伝の声や歩き周る人の話し声などさまざまな声が聞こえてくる。
「う~ん」
ゆりかはタブレットで何の出し物が出ているかの一覧表を確認するが、なかなか行きたいものが決まらない。
そこでほたるはゆりかのタブレットの一覧表を指差して話した。
「じゃあそれなら漫画研究部のところに行ってみようよ」
「うん、いいかも」
漫画研究部の部室となる空き教室に付くと教室の外までさまざまな絵が貼られていた。
「みんな絵が上手いよね~ 私も絵が上手ければ入ってたかもな~」
「うん、この絵とかいいよね、目がきれいに描かれてて上手いよね」
「そうだね~ 上手い人が羨ましいよ!」
中に入ってみると絵以外にもジオラマや部員が描いたと思われる漫画などが置かれていた。
「あ、このジオラマ、ゲームのマップのやつじゃん細かく作られてるね! 手が込んでるわ~」
ゆりかはそれを横目で見ながら置かれていた漫画本を手にとって開いてみた。
しかし中に描かれていたのはエッチな絵であったためゆりかは手にとっていた漫画本をそっと元の場所に戻した。
その後もいろいろな出し物を周り、中庭で休憩をしていると、にちかとめいひがやってきた。
「探したぞほたる!」
「ごめんごめん」
「男子の制服、にちかが着るとかっこよく見えるよ!」
「そうなのか! ならずっと着てようかな!」
「返さないとだめでしょ」
「まあそうだな!」
「だけどにちかが普段から男子の制服着てても違和感無さそうだからいいかもね、校則でも許可されてるし」
「ほ~う」
にちかはほたるの発言に興味がありそうな反応をした。
「それじゃあ早速周ろうか!」
めいひは楽しそうに言った。
学校内を歩いているとにちかが指を差し、話し出した。
「おいほたる~ そこのお化け屋敷とかどうだ~!」
「怖いから行きたくないよ~」
にちかが指差したお化け屋敷は会議室が魔改造され出来たお化け屋敷であるため、つまり中が広いということになる。
広いということは怖い空間が長く続くというとこであり、怖いものを見たい訳ではないほたるはとても行きたくないと思っていた。
だがほたるの思いは無視され、ほたるは腕を引っ張られ強引にお化け屋敷の中へと連れていかれてしまった。
中に入るとおどろおどろしい雰囲気が立ち込めていた。
「怖く無いから大丈夫だぞ!」
「いや怖いよ~」
中には赤い手形の装飾や理科室から持ってきたであろう人体模型などが設置されていた。
ほたるは怖いので呼吸を整えながらゆっくり進もうとしているが、にちかがぐいぐい引っ張るのでガンガン前に強制的に進まされていた。
するといきなり物陰から恐ろしいお面を被った人が飛び出してきた!
「キャーーー」
ほたるは叫んだ。
「ほたる~ びっくりしすぎだぞ!」
「ごめん」
しばらく歩くとまたお面を被った人が飛び出してきた。
「キャーーー」
「同じ仕掛けなんだからなれようぜ!」
またしばらく歩くとまたお面を被った人が飛び出してきた。
「キャーーー」
「あ~もういいや!」
それが最後の仕掛けだったようでほたるとにちかはお化け屋敷から出ることが出来た。
「中から何回もすごい叫び声したけど大丈夫?」
めいひが心配そうに言った。
「ほたるがさ~同じ仕掛けなのに毎回叫ぶんだぜ~ 面白かったから一緒に来ればよかったのに」
「本当に怖かったんだってば~~」
ゆりかは思った、「このほたるちゃんかわいい!」
そこ後も出し物を周り、時間はお昼を過ぎていた。
「ほたるちゃん!」
「なに~」
「お昼過ぎてるよ」
「それがどうしたの~」
「店番……」
「あ、そうじゃん店番行かなきゃ!」
「じゃあ行こう」
ほたるはうなずいた。
「にちかちゃんとめいひちゃんまた後で」
「おう後で」「バイバイ~」
ほたるとゆりかは急いで更衣室に行き男子から借りた制服に着替え、自分のクラスへと向かった。
ほたるとゆりかはお客さんの迷惑にならないように、静かに入り前の時間の人と交代した。
クラス内は女子は男子の制服を着て、男子は女子の征服を着ているという不思議な空間になっていた。
だがここで問題が起きた。
どうやら思ったよりコーヒーの注文が多く、コーヒー豆が無くなってしまったのであった。
文化祭が終わるまではあと三時間ほどあったのでこの長い時間、喫茶店なのにコーヒーが無いのは死活問題なのであった。
「ほたるちゃん、コーヒー豆買ってきてほしいな」
「え……」
ほたるは少し考えた後に結論を出した。
「ゆりかちゃんのお願いなら、行こうかな」
「ありがとう! 行ってらっしゃい!」
勢いのままにカバンを持ち教室を飛び出したのはいいが、男子の制服で周囲の視線が痛いほたるであった。
ほたるは頬を赤らめながら学校を出て最寄りのスーパーへと向かった。
スーパーへ着いても周囲の視線がほたるに痛く刺さっていく。
ほたるの心の声
「なんでこのまま来ちゃったんだろ、恥ずかしすぎる」
実際のところ周囲の人はあまり気にして居ないのだが、ほたるにとっては見られただけで奇怪な目で見られているような気がして、恥ずかしさがどんどん増してくのであった。
20分ほどで教室へと戻ったほたるは周囲の視線のダメージでくたくたになっていた。
「ほたるちゃんありがと~ でもなんでそんな疲れてるの? まさか走って来たの?!」
「いや、そんなことないよ、普通に歩いて来たから大丈夫」
「そうなんだ、もう私たちの番終わり見たいで次の番の人も早めに来てくれたから交代出来るみたいだよ」
「やっと終わったか~」
「まだ茶道部の店番があるよ」
「それもか~」
スーパーでくたくたになってしまったほたるにとっては、茶道部の店番も今ではやりたくなくなってしまっていたが、行ったら行ってみたで楽しかったほたるなのであった。
茶道部の店番も終わりみんなと合流し、学校内に居るお客さんも減り初めていた時に文化祭終了の放送が流れた。
休憩スペースでは一日中動いて疲れた生徒たちが、たむろしていてその中にはほたるたちの姿もあった。
「やっと終わったね!」
「今日だけじゃなくて明日もやりたいな!」
「もう疲れたからしばらくやりたくないな」
「確かにね~ 一日でもこんなに疲れちゃうのに二日もあったら大変だよね」
めいひもほたるの意見に共感したようであった。
「とりあえず教室戻ろうか」
「よし教室まで競争だ~」
「にちかちゃんまって……行っちゃった」
「私たちも競争しちゃおうか」
めいひが以外にもこんなことを言い、ほたるはぽかんとした。
「え、じゃあ早歩きなら大丈夫だろうからそれで競争しちゃおうか」
「よーーいドン」
三人は階段を駆け上がり教室へと戻って行った。
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