第4話


少しの間そうやって未来と幽霊の体を使って遊んでいたら、電話がなった。



「はい。もしもし。」


「お、凛斗か。お前、学校に来てないようだが…………桐井未来の件で来ないのか?」



そう言った先生の声を聞いて、ぼんやりとしていた頭が覚醒した。


そうだった。未来を殺した奴らを殺さなくては。



「先生。未来を殺した奴らを教えてください。」


「はぁ、やっぱりまだその調子か…………。親御さんも居ないようだし…………どうしたものか。」


「早く教えてくれればいいんですよ! さぁ! 早く!」


「今のお前は危険だ。教員をそっちにやるから、そこで待ってろ。」



そう言って電話が切れた。


やはり学校は狂ってる。


人殺しは殺されてもおかしくないはずなのになぜそんなヤツらを守るんだ。


俺が怒り狂っていると、未来が悲しそうな声で俺に語りかけてきた。


「ねぇ、先輩。もうやめて! いじめられていたのは事実だけど、自殺したのは全部があの子たちのせいって訳じゃないの!」



そうか。未来は優しいからいじめっ子達に同情してるのか。


だが、そんな優しさはまた新たな被害者を増やすだけだ。


何としても殺してやる。



「いじめなんかしてる奴が1番悪いに決まってるだろ。あんなヤツらのために気を使うな。」


「あの子たちの為に言ってるわけじゃないの! 先輩の為に言ってるの! 」


「俺の為?」


「先輩はこのままだったらきっと、あの子たちを本当に殺してしまうかもしれない。そんな事したら、先輩は捕まって、最悪死刑よ?」


「ふっ、お前が居ない世界なら俺は死んだ方がマシなんだよ。」


「いや、私はここに居るじゃない!」


「いや、お前は死んで…………ん?」



俺はそこで気づいてしまった。


いや、今まで気づかなかった俺が馬鹿なのだろう。



未来は、ここに居る。つまり、俺はまだ未来と一緒に居れられるという訳だ。


という事は、俺は捕まったらまずいという事か。



「やっと分かってくれましたか? まぁ、あの子たちの為に言ってる訳じゃないとは言ったけど、私が自殺したのは本当にあの子たちだけのせいじゃないと言うか、鈍感すぎた私と先輩が悪かったというかなんというか…………。」


「ん? どういう事だ?」


「な、なんでもないです!」



未来は何かブツブツと呟いていたが、俺はあまり聞き取れなかった。


まぁ、それは良いとして、まずは未来とまだずっと一緒にいられることを喜ぼう。


そこで俺はふと疑問に思うことが出来た。



それは、未来は俺と一緒に居たいのか? という事だ。


せっかく生き返った…………いや、生き返った訳では無いのか。


まぁ、どっちにせよ、両親の元に帰る事だって出来るだろう。


…………俺としてはずっと俺の元にいて欲しい。


もう絶対に未来との別れなど経験したくない。


げど、未来が俺の元じゃなく、両親の元に帰りたいと言うならば、俺は未来の気持ちを優先したい。



「んー? どうしたんですか? そんなに難しい顔して。老けますよ? まぁ、私の闇の力を使えばその程度すぐに若く出来るのですが…………普通の人間には使っては行けないと魔法法で規定されてい…………。」


「未来。真剣な話をしたい。聞いてくれるか?」


「…………分かりました。」



未来は非常に素直に黙ってくれた。


未来は他の厨二病とは違い、非常に空気が読める。


だからこそ関われば関わるほど魅力が滲み出てくるのだ。


未来をいじめたヤツらはこの魅力を1ミリも理解しないまま迫害したクソどもだ。


っと、いけないいけない。怒りに呑まれるところだった。


俺は怒りを一旦抑え込み、冷静に話始める。



「まず最初に、俺は未来とこれからもずっと一緒にいたい。だから俺の気持ち的にはお前には両親の元に帰ったり、他の人の所へ行ったりはしないで欲しいんだ。」



未来は何も言わずにコクリと頷く。



「けど俺はお前の気持ちは尊重するつもりだ。無理やり俺の元にいる必要も無い。そこで、お前の本当の気持ちが聞きたいんだ。お前は…………俺の元に居てくれるか?」



俺は、恐らく人生で一番緊張しながら、それでいて1番真剣にそう聞いた。


それを聞いた未来は真剣な面持ちで答える。



「私は…………私の気持ちは…………ふっ、あははははっ!」


「え? え!?」



未来はこの真剣な雰囲気を吹き飛ばすくらいの勢いで笑い飛ばした。



「そっかぁ、言ってませんでしたね。私はみたいなんですよ。だから、両親の元に帰ったり、他の人の所へ行ったりしても意味が無いんですよ。それに私は先輩の近くを離れられないですしね!」


「そ、そうだったのか。」



 ほんとになんなんだよ。


 なんだか少しバカバカしくなって俺も未来と一緒に笑い出してしまった。



「はぁー。楽しい。本当にお前といると楽しいよ。」


「あははっ! 今日はやけに素直ですね!」


「…………あぁ。」



 本当に楽しい。


 俺はやっぱり馬鹿だ。


 そんな俺にまたと無いチャンスが巡ってきたんだ。


 もう、勇気を出すしかないだろう。


 俺は未来を見つめた。



「…………先輩?」



 未来は不思議そうに首を傾げてこちらを見つめる。



「お前は本当にかわいいやつだ。」


「えっ!?」


「起こってる姿に泣いてる姿、照れてる姿に笑ってる姿。何気ない日常の姿が本当に可愛いんだ。」


「ちょ、ちょっとまって…………。」



 未来は恥ずかしがっているのか、焦って俺を止めようとしてくる。


 しかし俺は止まらない。



「俺はお前とずっと一緒に居たい。俺はお前のことが…………!」


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