第8話 第二夜の2
「先ほど、後3月で身体を取り戻さないといけないと言っていたのは、私の誕生日が来てしまうから?」
「いや、君の婚姻式が3月後にあるためだ。」
「は?婚姻?私が?」
カミュスがさらっと告げた内容に、私は動揺する。
「私16歳になるのでしょう?早いのでは?」
「別に普通のことだ。親の同意があれば、女性は16で婚姻できる。幼いうちに婚約を結び、男性が成人した上で18、女性は先ほど話したように16になれば、婚姻するのが一般的だ。」
まさかの政略結婚だった。いやお見合い結婚が普通?ということだろうか。
「さすがに身体がない状態で婚姻はできないだろう。今君の見た目が幼いのは、身体と同時に魔力が奪われて、回復しきっていないためだ。回復すると見た目が実年齢に近づいていくと考えられる。」
あぁ、だから寝て回復して見た目が3歳から6歳くらいになったのか。
先ほどカミュスに頼んで、姿見を出してもらい、自分の姿を見てみたのだ。
髪は相変わらず足首くらいまであり、背は伸びていた。
服も丈が伸びていたが、なぜだろう?夢の中だから適当に合わせられたのだろうか?
カミュスが服の丈を伸ばしてくれたのかもしれない。先ほど着ている服をドレスに変えたように。
「今失っている記憶も身体が戻れば、多分同時に戻るであろう。婚姻に関しても準備は済んでいるそうなので、記憶が戻れば特に問題ないであろう。」
問題ないのだろうか?そもそも私の婚約者って誰?
私は目の前にいる黒髪の彼をじっと見つめる。カミュスの表情に特におかしな点はなかったが、なぜかカミュスにそれを聞くのはためらわれた。
魔王に身体と魔力を奪われた私は、意識のみカミュスの夢の中に逃げてきた状態らしい。
魔王は正直人間には興味はない。
ただ、魔法が使えるほどに魔力量がある人間はまれに魔王の気を引くのだそうだ。
すでにカミュスの色と視力を奪った魔王が、さらにカミュスの近くにいた私に干渉してくるなど、通常では考えられないほど珍しいことなのだそうだ。
「私以外の者に干渉すると思っていなかったのだが。あせって取り返そうなどと行動を起こさなかったから、奴の不審をかったか。」
ようするに、カミュスが自分の奪われたものを取り換えそうとしなかったから、つまらなくて、私からも奪っていったということだ。そうすれば、さすがにカミュスが動くだろうと考えて。
「とばっちりじゃない!」
「しかと取り返すから。」
私も困るし。カミュスはそう口の中でつぶやいた。
結局、私は3月後の16歳の誕生日に婚姻するため、それまでに身体を魔王から取り戻さなくてはならないということだった。
「でも魔王が複数人いるのであれば、カミュスから色を奪った者と、私から身体と魔力を奪った者は違うということはないの?」
「いいや。同一人物だ。」
使者がきたからな。カミュスはそう言って、紅茶を口に含んだ。
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