第6話 期限
「テラスティーネ様の件については、私も説明が戴きたいのですが。」
「説明はしたいが、あいまいな部分が多々ある。」
「お目の色が変わったのと関係がございますか?」
以前は赤かったと思うのですが。違いましたか?とフォルネスに言われ、カミュスヤーナは片目に手を当てた。
「私の色と同様に、テラスティーネの身体が奪われた。」
「カミュスヤーナ様はそれをどこからお知りになられたのですか?」
「本人の意識が私の夢の中に退避してきた。」
「・・・なるほど。」
つまり、テラスティーネ様はカミュスヤーナ様の中にいらっしゃるのですね?とフォルネスが問いかけると、カミュスヤーナは苦々しい顔をする。
「ただ、寝る度に夢の中で、テラスティーネと会話できるわけではない。多分魔力を消耗または奪われていて、回復期にあるようで、記憶も失われている。魔王とどのようなやり取りがあったかも不明だ。」
その後考え込み始めたカミュスヤーナに向かって、フォルネスが続きを促すように声をかけた。
「カミュスヤーナ様。」
「ああ、すまない。フォルネス。テラスティーネを危険な目に合わせてしまって。」
カミュスヤーナはフォルネスの方を向いて、謝罪する。そんなカミュスヤーナの顔をフォルネスは心配そうにうかがう。
「今はテラスティーネに目を借りている。魔力感知のせいで、常に魔力を消費するし、疲れがひどかったのでな。」
「だから、瞳が青になったのですね。」
理解できました。とフォルネスが応えた。
「テラスティーネの成人や卒業はこの冬だし、卒業のための座学類は終わっていたよな?他に何かテラスティーネが関わる催し物などあったか?」
「テラスティーネ様の婚姻が間もなくです。もう婚姻の準備はほぼ済ませてありますが。。」
「あぁ、テラスティーネは夏生まれか。」
「カミュスヤーナ様。さすがにお忘れになられるのは困るのですが。」
カミュスヤーナがフォルネスを振り返ると、フォルネスは胸に右手を当てて、軽く身をかがめた。
「もともと婚約中でしたから、テラスティーネ様が16歳になられると同時に婚姻の儀式を行う話で準備は進めております。」
「正確にはいつだ。」
「テラスティーネ様は3月後に16歳になられます。」
両家の準備も既に整っております。とフォルネスが続けると、カミュスヤーナは表情を繕えず、こめかみに手をやった。
「あと3月以内にテラスティーネの身体を取り戻さなくてはならないのか。。」
カミュスヤーナは立ち上がって、扉の方に歩み寄る。
「領政はアルスカインに任せるしかないか、まぁ落ち着いてはいるし、いい機会であろう。」
ぶつぶつと考えをこぼしながら歩む主人の後ろを、フォルネスは素知らぬ顔で追っていった。
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