目が覚めたら夢の中
説那
第1話 第一夜の1
目を開くと、真っ白な空間にいた。
「ここ・・どこ?」
来たことのないところだ。それどころか見覚えもないところだ。
ここはどこなんだろう?そして私はなぜここにいるのだろう?
床に寝ころんでいたようで、ゆっくり体を起こしてみる。
顔の横に水色が見えた。
視線を向けてみると、それは髪だった。
自分の髪にそっと触れてみる。さらさらとした髪質は触っていてとても好ましい。
自分の髪に触れた手の大きさにぎょっとした。
認識していたよりも明らかに小さいのだ。
「えっ?」
顔や身体を見まわし、ペタペタと触れてみる。
服は真っ白なワンピースのようだ。飾りなどやボタンもないシンプルなもの。
靴も靴下も履いていない。
顔は頬がふっくらしているかなとは思う。でも小さくなった両手で覆えるのだから、顔も小さくなっているのだろう。
姿見がなく、外から見られないので、実際どうなっているのかはわからない。
でも多分私は幼くなっている。
自分の周りをキョロキョロと見まわしてみた。
床に触れるとふかふかとした敷物が引いてあるようだ。
敷物は白く、床に同化するかのように、一面に引かれている。
四方は壁に囲われており、一面だけ黒くなっている。壁には窓も扉もないようだ。
しかもかなり広い。
その時遠くから人が歩いてくるのが見えた。
私の前までくると、片膝をついて、顔を覗き込んできた。
男の人のようだ。
黒い髪、両目はグレーの布で覆われていて、これでは目が見えないのではないかと思う。
でも顔を覗き込んできたということは、彼は前が見えているのだろうか?
顔の造作は整っており、いわゆる美形だ。鼻筋も通っているし、目の覆いがなくとも、その辺りを歩いていたら人が振り返るような男性。
「はじめまして?」
とにかく初めての人だ。何か聞けるかもしれない。
声をかけられて、相手はぴくっと身体を震わせた。
驚かせてしまっただろうか?
「はじめまして、ではない。」
声には親しい者に向ける優しさが含まれていた。でもこの人に会った覚えはない。
「姿は変わっているが、テラであろう?」
テラというのが、私の名前だろうか?
そもそも私の名前は・・なに?
ここにいるまでに至った経緯も名前すらもわからない現実に、私は血の気が引く思いがした。
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