転校生が来ることになったんだが
ピピピピピ、ピピピピピ......。
と、朝から小鳥の囀りと共に起床時間を知らせる電子音が俺の部屋に響き渡る。
赤く塗装され、丸い形をした安物の目覚まし時計だが音量だけは一級品だ。
何せこの目覚ましがあればどんなに眠気が強くても必ず起きれるんだからな。
俺はいつも通り瞼を閉じたまま手探りで目覚まし時計まで手を伸ばし、スイッチを叩き電子音を止まらせた。
重い身体を起こしてベッドから床へ足を移動、そしてそのまま洗面台へと直行し顔を洗う。
この何年も変わらず行う一連の動作を終えると、誰もいない静かなリビングに足を向かわせる。
そこにはテーブルの上にラップされてある目玉焼きとウインナーが盛り付けられた皿が置かれていた。
何年も変わらない唯一親父が作れる朝食。
不思議と飽きることはなく、ポットに水を入れ沸かして作るインスタント味噌汁、電子レンジで加熱して作る冷凍食品の白米と共に食べている。
テレビをつけニュース番組を脳を覚ますために真面目に眺め、朝食が終わると制服に着替え歯磨きをする。
学校の準備は前日に終わらせるタイプの人間なため、朝はあまり時間を必要としない俺はそのまま家の外へ足を踏み出すのだった。
そして友達と合流した俺は普段通り他愛のない話を繰り広げ笑いを浮かべながら歩き、気がつけば学校に着いていた。
廊下を歩いていると何やら教室から騒がしい声が聞こえてくる。
時間割も今日は何の変哲もないただの平日で、特別なことは何一つない。
しかしいつもとは違うこの盛り上がり様は何かが起きた事を示している。
教室に足を踏み入れるとすぐ近くに俺の席があり、その隣に談笑していた外間麻美がいた。
麻美が俺の存在を認めると、おはよーと一泊を置き続ける。
「なんでこんな騒がしいのかわからないでしょ?」
「そりゃーな、今来たばっかりだからな。でもこの盛り上がり方は普通じゃないのはわかる」
「どーしよっかな教えてあげようか迷うんだよねー」
ははははは、と周りの女子と笑い声をあげる麻美。
顔を綺麗に整っており、運動神経も抜群で、性格も申し分ない良さを誇る彼女は人気者だ。
だが目立つ行為はあまりせず、そういう点でも周りから信頼を寄せられる。
そんな彼女はよく俺に話しかけてくるのだが、別に俺に恋心があるとかそう言うのではないらしい。
「いつも遅刻ギリギリに学校に来る俺が悪い、反省するから教えてくれ」
「じゃはいこれ。してくれるなら教えてあげる」
そう言って渡してきたのは300円の硬貨。
つまり売店でパンを買ってこいと言う事だ。
俺は深い溜め息を吐いてから、わかったよとだけ言葉を返す。
「じゃあ教えるね。一言に言うと転校生が今日来るんだって。しかもうちらのクラスに」
「因みに性別とかわかるのか?」
「噂によると女子らしいね。しかも滅茶苦茶容姿端麗完璧美少女とか言われてる」
「だからあんなにみんな騒いでいたのか」
「康太も内心お祭りでしょ。可愛いからってだる絡みしないようにね? 嫌われるから」
「そんなのわかってる。それよりも──」
何だか経験した事のない様な、胸騒ぎがする。
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