第120話 ムトゥンガ遺跡2
「精霊の居なくなった土地は狂う。昔からそう言われていたのですが、あたしも実感する時が来るとは思ってもいませんでしたよ。ここら一帯の土地は枯れ、作物が実らなくなりました。文字通り井戸も枯れたのです。それでいて少し南の川は溢れ出して全てを押し流しました――」
この世界は精霊によって秩序が保たれています。例え感じ取れなくても精霊は魔力と共にあり、この世界を支えているのです。
今もこの島に精霊は見えませんが、見えないだけで存在しないわけではありません。
「――そんな風に壊れたこの島をベアゴロー様は復旧、いや、修復して回ってくださった。今のトゥアタヒ村に降臨したベアゴロー様は溢れる川を調整し、枯れていたパーの村、つまりは今のトゥアルア、此処を再び人が住める地にしました」
「その後については歴史として語られていますな。各地を巡りながら北上し、ルイパパに生き残りを集めてクマノ勇者国の初代国王となったのです。この辺の歴史は若様も知っていますよな?」
「も、もちろんっす。クマノ勇者国の名前が付いたのはベアゴロー様が島から去ってからなんすよね?」
「ええ、その通りです殿下。その後は知っての通り四年毎に
「そうなんすか?」
「殿下も魔境開拓政策の失敗としては聞いたことがあるはずですよ」
「ああ、ここ城塞都市トゥアルアが整備されるきっかけになったやつというか、その失敗で辺境送りになったやつっすね」
「へ、辺境送りわん? ここってそんなとこなのかわん……」
「今は違うっすけど、昔は流刑地扱いっす。もっとも、今も都の奴らはここには来たがらないっすよ。住めば都なんすけどね……」
「まあ、実際のところは失敗で辺境送りになったのではなく、ムトゥンガ遺跡攻略に向かったが帰って来なかったから辺境で余生を過ごした事にされた、と言うのが真相となるんですけどね」
「なっ、葵様、それは本当ですか?!」
「おや? キャン坊も知らなかったのかい。まあ、王家の大失策でもあるから隠したかったのだろう。なにせ、そのムトゥンガ遺跡攻略で『魔槍スクイド』も失われてしまいましたし……」
「えっ! 葵様、それホントっすか? 『魔槍スクイド』は『大異変』で失われたって聞いてたっす。すると、ムトゥンガ遺跡にあるってことっすか?!」
「若様、落ち着いてください。それで、その、『魔槍スクイド』がムトゥンガ遺跡にあると言うのは本当なのですか?」
キャンベルさんが興奮して立ち上がった
「ああ、間違いないだろうね。大々的に『魔槍スクイド』を掲げて此処を旅立った一行は一部を除いて帰ってきませんでした。なお、一応ムトゥンガ遺跡には着いたらしいですよ。ただし、逃げ帰るのがやっとだったと。そして、逃げ帰った者はその地を『大迷宮ムトゥンガ』と伝えました。もっとも、それから更に数百年、今現在ムトゥンガ遺跡がどうなってるかは誰も知りません。その後もムトゥンガ遺跡攻略に向かった者はいますが攻略したという話どころか辿り着いたという話も聞きません。勇者様はそれでもムトゥンガ遺跡に行かれるおつもりですか?」
葵さんの覚悟を問うような視線がボクに刺さる。
「もちろんわん! 龍脈があってダンジョンがあるなら水龍さんがそこにいる可能性が高いからね。それに、龍脈が正常化すればこの魔境も元に戻るかもしれないわん」
「
「はぁ、お嬢様が行くのであればわたしも着いていきますよ」
ここまで静かに話を聞いていた
「……
「若様……はぁ、ええ、若様が行くのであれば私も着いていきます。それに、魔境に詳しいものも何人か連れていきましょう」
◯[おお、次は魔境行きで決定か!]
∪[首都に行くんじゃないのかぁ。ところで、首都の名前って出てたかな?]
◆[多分出ていない。北の方にあるとだけは言ってた気がする]
「北の都? たしか『首都ヌイパパ』って聞いたような気がするわん」
誰かに聞いたか、地図で見たんだったか。
ここからは徒歩や馬車で十日前後かかる距離らしい。
❤〚名前かわいい。これはクマさん命名?〛
◆[そう言えば『城塞都市トゥアルア』も元は『パーの村』って]
∴[転移ポータルで着いたとこは『トゥアタヒ村』でしたね]
「街の名前の殆どはベアゴロー様が復興と同時に順番に付けてくださったものですよ。ムトゥンガも話を聞いたベアゴロー様が名付けたのですが、結局自身が行く暇なく島を去ってしまわれました」
ベアゴロー研究家達によると『周辺の応急処置はしといたけど大元はそのままだからヨロシクくまー』の『大元』が『ムトゥンガ遺跡』であるとの説が有力であるらしい。
そして、更に葵さんから魔境の話等を聞いたボクたちは三日後に『ムトゥンガ遺跡』に向かうことにした。
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