第64話 正式サービス開始前夜2

『――――それでは、正式サービスで会いましょう!』


 正式サービス直前公式生放送も終了し今週末のメンテナンスを経てアンメモも正式サービス開始となる。


 公式生放送のミラー配信も終了して、そのまま雑談配信を継続することにした。

「結構な情報量だったね。ボクの地域に関連するところの情報がまーったくと言っていいほどなかったけど」


◯[ベータ地域勢乙www]

▽[プレイヤー数万人の地域とわんこ1匹の地域では差も出るw]

◆[けど、わん太のとこの方がこっちより発展してる気がする。また村を増やしてるんだよね?]


「そうわん。今は東の海へ向かおうキャンペーンとして東の森近くに新しい村を建設中わん」

 拠点となる村や町からの距離に応じてモンスターの強さが変わるアンメモにおいては周辺攻略に村作りは欠かせない要素となる。RPGと見せかけて実はシミュレーション要素が重要だったりするのだ。


▽[あー、拠点大事だよな。こっちの攻略組も村というか柵で囲んだだけの拠点増やしたおかけでやっと進めるようになったわ]

◆[村になるとNPCの行商人とかが来るようになる]

∪[正式サービス開始で王都ラナとかも色々施設が増えるらしいけどわん太のところは?]


「行政の長に聞いてみます……ってボクなんだわん。あれ? もしかして今後もバージョンアップで施設増えたりはしない?!」

 実際にはパウリの街を広げたりは町長さんや色んな代表の人達と話し合って決めている。もっとも、ボクがいないことも多いので自由に発展させて良いと伝えてもあるので勝手に大きくなっていることも多い。


∴[わん太のところは既に独立した地域扱いだったか]

∈[王都ラナも運営がどこまで関与しているかは怪しいにゃ。今回発表された新しい施設とかも大分前から改装が始まってたにゃ]

◆[あー、たしかに。貴族街のとこの建物が図書館になるとかは現地の人は知ってたしな]


「あ、そうなんだ。今回の放送で発表されてたからメンテナンス中に新しく実装されると思ってたわん」


∈[そういう意味では施設に関する新情報はないにゃ。どれも既に建設や改装が行われているのばかりにゃ]

◆[このアンメモはバーチャルなくせして魔法でパッと建物ができるとか無いもんな。現実並みに世知辛い……]

◎[あれ? わん太のとこの親方なモグラさんとかって魔法で工事してなかった?]


「親方? あー、土竜族のみんなは土系の魔法が得意わん。それに、土木系のスキルも持ってるからかなり早いわん」

 現状、魔法はスキルよりも大雑把ではあるが大規模な効果が発動できる感じだ。


◆[あ、そうか、スキルがあったか。それで現実より色々早いんだ]

▽[プレイヤーで土木系スキルはほとんどいないけどな。生産系スキル持ちより更に少ない]


「わん太様、配信中失礼しますが、少々よろしいでしょうか?」

「わん? ってクロセルさんか。何?」

 クロセルさんはフカルア山に住んでいた氷龍さんで、今はボクの拠点となっているこのパウリの街の家で執事として暮らしている。


◎[イケオジキターーーー]

∪[クロセルさん、ほんとに執事になってたんだ]

∴[それで、何の話?]


「わん太様達が行きました東の森ですが、冒険者ギルドに依頼して確認しましたところ、やはりダンジョン化しているようです」

「やっぱり。ところでダンジョンの中の魔物も村が近くなると弱くなるのかわん?」


∈[確かに気になるにゃ。王都ラナの王城の地下にもダンジョンがあるって噂があるしにゃ]

▽[あー、そう言えばコトの街も探索者シーカーギルドの地下にダンジョンがあるらしいな]

◎[え、マジ、ダンジョンあったんだ]


「既に出来上がっているダンジョンでしたら弱くなったりはしませんね。ただ、魔物を間引いたり魔力の消費が多くなるため全体的には攻略しやすくなる傾向はあります」

「なるほど、フィールドのモンスターとは違って弱くはならないかー」

「ただ、迷宮主の討伐を行いましたらダンジョンのレベルが下がる傾向はあります」


 ダンジョンにもいくつか種類があるらしい。フカルア山のように管理されているダンジョンや野良で発生したダンジョン。それに突発的に現れるダンジョンもあるとのことだ。


◆[流石クロセルさん。元ダンジョンマスターは物知りだ]

∈[ということは、王都やコトの街は管理されてるダンジョンなのかにゃ?]


「王都やコトの街は存じませんが、本当の意味での管理されているダンジョンとは違うと思われます」

「え、そうなのかわん?」

「ここで管理しているとは我々龍族のような管理者かダンジョンマスターが居るダンジョンですな。もっともダンジョンマスターには簡単になれるものではありませんが」


◆[なるほど、ダンジョンマスター]

▽[簡単にダンジョンマスターになっていたわんこがいた気がする]


「あれは勝手に押し付けられた気がするわん」

「まあ、わん太様の生活は変わりませんし気にしないでください。まあ、普通はダンマスにはなれないものなんですよ」


 クロセルさんが淹れてくれた紅茶を飲む。これが飲めるだけでもダンマスになったかいはあるかもしれない。


「ダンマスのことは一旦置いといて、それじゃあ、次はメンテナンス明けの正式サービス開始配信で会おうね。ばいばいわ~ん!」


❤〚ばいばいわ~ん!〛

◯[おつかれー]

∈[正式サービス開始楽しみにゃー!]


―― 本日の配信は終了しました……


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る