第4話

 それからあたしは、アイツの声を聞くだけで、嬉しくなった。話声だけでも。

 アイツの声を聴くだけでも幸せになれた。

 でも、満足はしなかった。なので、ライブツアーに応募した。

 それが、見事当選した。

 席はあまり良い席ではなかったみたいだったが、どうでも良かった。アイツの生声が聴ける。ただ、それだけで。


 ソイツの声も十分素敵なのだが、あたしに響く声はアイツの声だった。

 もう、最高だった。

 喋る声。歌う声。どちらも良すぎた。

 ライブが終わり、帰ろうと思い、席を立ったとき、放心している女性の姿が目に入って来た。

 あたしは心配になり、その女性に声をかけてみた。

「大丈夫ですか?」

 女性はすぐに我に帰った。

「すみません。大丈夫です。余韻に浸っていただけなので」

「そうだったんですね。すみません」

「いいえ。心配してくださってありがとうございます」

 あたしは何事もなくてよかったと思った。

 そうしてあたしは、ライブ会場をあとにしたのだった。

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