第四話 アリア王女との望まない婚約。そして晩餐会。
「今日はお越しいただき、本当にありがとうございました」
俺は一番前の席から立ち上がり、大きく頭を下げた。さすが大公国だよ。余裕を持ってみんな座れるように大広間を用意したはずだが、全員座ることはできない。そのため、兵士に関しては、客室に案内することになってしまった。
「今日はザイン公国とルクセンブル公国にとって新しい時代の幕開けでございますの」
ジムルが俺の顔を見て笑みを浮かべる。アリア王女のことを一番心配しているのは、ジムルかもしれないな。
「ジムル、こんな弱小国に気を使う必要なんてないわよ。
王女は地雷姫なだけではなく、空気も読めないらしい。周りを見てみると、みんな凍りついている。見るにみかねてカノン王女が頭を下げた。
「本日は、
「ちょっと、カノン。勝手に
アリア王女が即座に席を立つ。こんなのが婚約相手とか、本当に最悪だ。俺はカノン王女に挨拶するだけして、その後の話はクリスに任せることにした。話しても言葉が通じる相手ではなそうだ。俺の視線に気づいたのかクリスが助け舟を出してくる。
「まあまあ、あまり硬い話もよくありませんからな。とりあえず、一枚の手紙がそちらから届きましたから、坊ちゃんも準備をさせていただいたんですな」
それを聞いてジムルが口を挟んでくる。
「おっしゃる通りでございますの。我が公国の君主も今回の婚約に相当期待をしているのですの」
ジムルは一旦、そこで区切る。
「ザイン公国のカムイ様さえ良ければ、すぐにでも結婚させたいと言っております」
「ちょちょ、ちょっと待ってくれよ」
流石に話が早急すぎる。俺は少し遅くなったが夏からハインリッヒ王国の魔法学園に通うことになっていた。
「ちょっと、ジムル何を言ってるのよ! お父様も気が早すぎるわ。そうね、少なくとも魔法学園卒業までは、結婚なんてしたくはないわ」
逃げられたら、どうするんだと言うお父様の声が聞こえてきそうだ。ただ、俺もその方が嬉しい。
「じゃあ、そういたしましょうかの。カムイ王子はそれでよろしいでしょうかの」
ここで俺は断る選択肢はない。ザイン公国に呼んだ時から、二国間での婚約の話はまとまっているのだから……。
◇◇◇
突然、目の前が真っ暗になり、見たことのない光景が広がった。なんだ、この世界は。俺は筒状の武器を肩から、ぶら下げていた。
「奏音、俺はお国のために、死ぬ覚悟はできてる」
「神居!! わたしも連れて行ってください」
「駄目だ。そなたを戦地には連れていけん」
「なら、わたしをもらってください」
「俺はお前を拘束したくはない」
「だめです! わたしはもうあなたしか愛せないです!」
◇◇◇
また
「それじゃあ、よろしくお願いしますの」
ジムルはもう一度大きく頭を下げた。
話し合いが終わった後、魔法で作られた契約書にサインをする。アリア王女が、散々文句を言いながらサインをしていた。
◇◇◇
「さて、ここからは大食堂に来て、ザイン公国の海の幸を楽しんで行ってください」
「海の幸ですって!!」
俺の言葉に大きな声を出したのはアリア王女だ。海の幸が取れる地域は限られている。ザイン公国のような辺境の地で、そんな高級料理を食べれるとは思ってなかったのだろう。
食堂でアリア王女は味を確かめてやろうじゃない、と言う完全に上から目線で椅子に座って目の前の食事を見た。
「これは、何よ?」
「これは、オマール海老でございまするな」
「これは?」
一つ一つの食事に指差して、皿に入れて食べた。
「これは……これでまあまあ、美味しいかもしれないわね」
物凄く悔しそうな顔をしながら、食事を睨みつけていた。
「カムイ様、私すごく美味しいです」
「ちょっとカノン、あなたの評価は甘すぎわるわ。これはそうね……、まあ普通よ、普通」
「でも、お姉さま、凄い盛ってませんか?」
「これは……そうよ、味見をたくさんしたいからよ」
俺はアリア王女の焦った顔を見ながら、思わず嬉しくなった。街のみんなありがとう。お前たちのおかげで、アリア王女でさえ認めてるぞ。
それにしても隣国に
なのに、……俺は涙が出そうになって、思わず頭を上げた。
みんな、ありがとう。こんな食事を用意してくれてさ……。心から街のみんなに感謝をした。
―――
読んでいただきありがとうございます。
このお話は、婚約編、学園編、???編の三編からなります。
三つ目はそのうち明らかになってきます。
今後とも応援よろしくお願いします。
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