53.地球人の正体

 地球というのは、話の流れから言って、ヨシムラが来た惑星のことだろう。


「っていうか、それって本当なんですか!?」


 コスモは思わず、ヨシムラの言った言葉が本当かどうかを再確認してしまう。


「本当だよん♪ 私はあんまり嘘をつかないからねん♪」


 それこそ嘘だろう、とは、あえて突っ込まない。


 だが、確かに規格外の技術力を持っていることからも、本当の可能性は高い。


 ただ、そうなると……。


「コスモさんも気が付きましたか……?」

「うん、流石にね」


 そう……。

 人間に似ている、そして、これからの魔王の計画……それらの情報を合わせると、1つの答えが出て来る。


「ヨシムラさんは、魔族なんですか?」


 コスモはゴクリと唾を飲み込んだ。

 すると、ヨシムラはいつもの調子で話す。


「そうだね。いやいや、地球では普通に人間って呼ばれてるんだけどねん♪

むしろ、私にとっては君達の方が、「エ、エイリアンだぁー!!」って感じだけどねん♪

だって、地球人はここの人間みたいに、女の子同士で子供作らないしぃー!」


 メアも言っていた。

 魔族には、体がゴツく、声の低い者がいると。


 ということは。


「魔族……いや、紛らわしいから私は私達のこと、地球人って呼ぶね!

地球人には男と女がいてね、この惑星のエルフやドワーフみたいな感じで、子供を作るんだよん♪」


「な、なるほど……」


 衝撃の事実だ。

 ヨシムラが住んでいる地球というのは、この惑星の生物である“魔族”が繁栄に成功した惑星だったというのか。


「ってことは、魔王の計画はやっぱり成功してしまったって訳ですね」


 魔王の計画は、恐竜含む地球の生物を絶滅させ、スキルや魔法を持たない魔族を0の状態から繁栄させるという計画だ。


「そうだねん♪

確かに技術はこの惑星よりも発達しているけど、その代わり地球人と動物の共存が上手くいってないって感じだねん♪

多くの自然が地球人によって、破壊されてしまったのん♪」


 本当に申し訳がないと、コスモは思った。

 結果的に、自分達が地球を侵略したような形となってしまったのだ。


「なんか……ごめんなさい」


 コスモとユリは頭を下げたが、ヨシムラは特に気にしていないような、表情で言う。


「なんで謝るの? 別に私はもうこの惑星に永住することに決めたから関係ないよん♪

それに、むしろそのことが分かって、ようやく腑に落ちたんのん!

地球は人間だけ、明らかに他の生物との違ったからねん♪

むしろ、他惑星産の生物ってことで、納得したよん♪」


 本当に気にしていなさそうな表情だ。

 むしろ、誕生日にプレゼントを買って貰った子供のような表情を浮かべていた。


「とりあえず、私は気にしてないからね♪

そして、気にせず君達が今やろうとしてることをやればいいさ♪」


 やろうとしていること……?


「魔王の計画を阻止すること! それが君達のやろうとしていることでしょ♪」


 それは勿論だ。

 勿論だ……。


「あ」


 コスモは、気が付いてしまった。

 ユリも表情から察するに、おそらく気が付いたのだろう。


「ヨシムラさんは、魔王の計画が達成された未来から来た……ってことは、今私達がその計画を阻止したら、ヨシムラさんは……」


 そう、未来が変わってしまえば、その未来にいた地球人も消えてしまうのではないか?

 コスモは、そんな不安を口にした。


 対してヨシムラは……。


「うん! そこだよ! そこが気になって仕方がないんだよん♪」


 なぜか嬉しそうなヨシムラ。


「私の見解ではね、私が時間を超えてしまった時点で、この世界は元の世界とは似てるようで、違う世界になっちゃってると思うのん。パラレルワールドって奴ねん♪」


 パラレルワールド……?


「要するに、ここで魔王の計画を阻止しても、私が来た世界とは別な世界だから、私も消えないってこと!」


「それって確実なんですか?」


 確かにヨシムラは頭が良いのかもしれない。

 ただ、その見解が100%正解だとも限らない。


「だから証明して欲しいんだよん♪ そう、これは実験!! 私の見解が正しいかの壮大なる実験なんだよん!!」


「実験って……ヨシムラさんは消えるのが怖くないんですか!?」


「全然怖くないって訳でもないけど……この壮大なる実験が楽し過ぎるせいで、それも些細な問題だよん♪」


 凄い人だ、地球に住んでいる人は、皆こうなのだろうか?


「ヨシムラさん……」


 本当にこれでいいのだろうか?

 そんな時、ユリが口を開いた。


 なにかを閃いたようだ。


「ヨシムラさんが未来からやってきたってことは、逆に今度は未来に行って、今のままだとどうなるのか確認すればいいのではないでしょうか!」


 なるほど、今のままだと、どんな未来が待っているのか。

 計画は阻止できるのか、そこにヨシムラはいるのか、それを確認できれば問題ないという訳だ。


「私が時間を移動し、更に別な惑星まで来られたのは事故みたいなものだからねん♪

時間移動は無理無理♪

そもそも、私の見解では、パラレルワールドではないこの世界の未来に行くってのは不可能だと思っているんだよん♪」


「どういうことですか?」


 コスモがそう言うと、ヨシムラは、今から説明するという意の言葉を発した。

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