42.私は強いから
2日ほどかけて、王都へとやって来た。
半年ぶりの王都だが、あまり変わっていない様子だ。
『ここが“王都”か。“おおっと!” コスモ、そこの段差には注意した方がいいぞ』
「ユリと前来た時、この店で色々買って食べたよね」
「そうですね。あっ! あそこの宿は前、泊まろうとしていた所ですね!」
前回来た時は、本当に色々なことがあった。
結局前回来た時と目的は同じになってしまったが、今度こそはしっかりと魔王の居場所を知りたいものだ。
「今回もとりあえず、王宮に行く前に宿をとっておきましょう!」
以前と同じ宿をとり、コスモとユリは、王宮へと向かった。
「コスモです」
「あ、あなたは。少々お待ちください」
門番は王宮の中へと入り、戻ってくると、そのまま2人を通した。
「よく来たね、もう1人の英雄、コスモ殿」
「よくぞ来た、英雄」
国王は笑顔でコスモにそう言った。
なぜコスモが英雄呼ばわりされているかと言うと、訳あってメアの【剣聖】を所持していた期間があった為だ。
決して、コスモを馬鹿にしている訳ではない。
そして、隣にいる栗色ショートのかわいい子も似たような口調でそう言った。
そう、この子こそが、【剣聖】の真の持ち主である、メアだ。
なのだが……。
(なんか、メアちゃん口調変わった? 後雰囲気もなんとなく変わってる……?)
コスモが首を傾げると、国王が言う。
「驚いているね! うちのメア、随分と変わっただろう?
メアは私の後を継いでもらうからね。
もっと自分に自信を持つように言ってみたら、私の真似をするようになった。
嬉しいことだよ、まったく」
やはり強大な力を持つと自信がつくらしい。
コスモ的には、前の弱気な感じでも良かったと思った。
だが、将来国のトップに立つとなると、それでは駄目なのかもしれない。
かわいい顔して、無理してキリッとしている感がかわいく、コスモは思わずメアの頭を撫でた。
「撫でるな、英雄」
ムッとした表情で、手を払われた。
「ごめん」
そして、メアはユリを見る。
「久しぶりだな、ユリ殿」
「お久しぶりです。メアさん!」
メアは、ユリにも挨拶をした。
ユリの方が年上に見える。
ユリも決して大人っぽくなく、どちらかと言うと、年齢よりやや子供っぽい見た目なのだが、それでもユリの方がメアより年上に見える。
「今日は話があって来ました」
コスモは国王にたずねた。
魔王の居場所を教えて欲しいと、ストレートに言った。
「前にも言ったが、それに関して君に情報を与えることはできない。
なぜだか分かるかい? 教えてあげよう、君はもう、ただの一般国民だからだよ。
危険な目に合わせる訳にもいかない」
そういえば、国王はまだコスモが剣聖の力を取り戻した……いや、正確には取り戻してはいないが、前のように戦えるようになったのを知らないのだった。
「私、前のような強さを取り戻しました。とある方から剣聖の力を引き出せる装備を貰いました。これから、魔王を倒す手助けができると思います」
下手に隠しても良くないので、正直に言った。
「ほう、それはどんな仕組みで……?」
「分かりません」
ここだけは嘘をついた。
メアの力を無断で借りている状態なので、良い印象は与えられないとコスモが判断した為だ。
「コスモ殿、気持ちは分かる。だが、それはできぬ」
「なぜですか!? 戦力は多い方がいいと思います!」
「君が嘘をついているからだよ」
「嘘……? 嘘なんてついてません!」
本当は嘘も言ったのだが、強さに関して言えば、嘘は言ってない。
なので、嘘はついてないと言えるだろう。
きっとそうだ。
「はぁー」
国王はため息をついた。
「あのね、君に何ができるって言うんだい?
大体、剣聖に匹敵する力を得られる装備なんて、ある訳ないだろう。
嘘をついてまで魔王を討伐したいという、君の正義感は認めよう。
だが、駄目なものは駄目だ」
「私は強いです!」
と、コスモが自信満々で言うと。
「きいてられない」
メアが言った。
「いくらなんでも、私の【剣聖】の力を舐め過ぎだ」
「舐めてないよ!」
「では、【剣聖】の私と同じくらい、またはそれ以上に強いと言えるか?」
「う、うん!」
メアは、舌打ちをした。
「だったら、証明してみるべきだ。私と戦え」
メアがそう言うと、国王が口を開く。
「駄目だ! 一般国民……それも力が弱い者に対して、救世主の力を振るうなどと!! いくら私でも、怒るぞ!!」
「ですが、この人は【剣聖】の力を馬鹿にしています! この力は努力や装備でどうにかできる限界を超えています! なのに、それと同じくらいの力を出せるとは……馬鹿にするにも程があります!」
国王とメアの喧嘩が始まりそうだ。
「戦うよ、メアちゃん」
コスモはメアに言う。
そう、ここで強さを証明できればいいのだ。
「戦う……本気で言っているのか?」
「うん。私は逃げない!」
なぜかって?
「私は強いから!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます