40.剣聖スキルが強すぎちゃって無双!?
敵は全員油断している。
(今だ!)
「魔剣さん! お願い!!」
『ああ! スキル発動! 【ジェントルワールド】!!』
コスモがユリに向け、剣を振るうと、薄緑色の衝撃波が飛んでいく。
すると、ユリの傷が回復し、更には服までもが元通りとなっていた。
そして、衝撃波は貫通し、廃闘技場の壁にも当たってしまった。
『すまない。気合を入れ過ぎてしまった』
魔剣が出力をミスったのか、廃闘技場までもが、現役時代かのようなものに早変わりしてしまった。
というよりも、闘技場全体が、まるで建設直後かのようだ。
「お、お前、なにをした……!!」
悔しがる敵のリーダー。
未知の現象に怯えているようだ。
それもそうだ。
廃闘技場までもを、回復させてしまったのだから。
(私も驚いてるけどね)
だが、コスモは余裕そうに首を傾げる。
コスモは一発言ってやろうと思ったのだ。
「えっ? ただ回復させた、だけだど? 私なにか変なことした?」
「回復させた、だけだと……? こ、このっ!!」
敵のリーダーは悔しがる。
取り巻きも、「なんだこいつ」とでも言いたげな表情で、コスモを見ている。
(決まった!!)
コスモは内心ガッツポーズを決めた。
久しぶりに多くの人に対し、「凄い」と思われたせいだろうか、コスモの全身に性的ではない快感が響き渡った。
気持ち良すぎて涙が出る。
そして、今の内に、【剣聖】の力を用いて高速移動、魔剣で叩き、次々と敵の意識を奪っていった。
(よし、これで取り巻きは全員倒した! ……って、しまった!)
なんと、敵のリーダーがユリを抱えて、空へと逃げたのだ。
おそらく、これが敵のスキルなのだろう。
「ここまでは来れないよなぁ!」
行けなくはない。
ジャンプをすれば、届きはする。
だが、向こうはユリを人質に取っている。
このまま攻撃すれば、ユリも危ない。
「だったら!」
コスモはヨシムラに貰った、銀色のチョーカーに目立たなく付いている、青いボタンを押す。
「メタルウイング、展開!」
すると、チョーカーから背中にかけて、銀色の装備が展開された。
そして、そこから銀色の翼も展開された。
「飛んだだと!? 馬鹿なっ!?」
剣聖の飛躍力とメタルウイングの飛行能力があわさり、すぐに敵のリーダーの元へと辿り着いた。
並の人間では操作が難しそうだ。
コスモがここまで自由にこれを操れるのは、【剣聖】があってこそだと言える。
「ユリは返してもらうよ!」
「ぐぬぬ……あああああああああああああああああああああああああ!!」
「!?」
敵のリーダーは、ユリを地面へとぶん投げた。
「間に合え!」
メタルウイングから、エネルギーが噴射され、その飛行速度は加速した。
そして、コスモは見事ユリをキャッチした。
そのまま地上に降ろす。
「コ、コスモさん……えーと」
ユリの口に詰め込まれていた布を取り出すと、ユリは驚いた表情でコスモを見た。
確かに、先程から色々としているので、驚くのも無理はないだろう。
「話は後だよ!」
「あ、はい」
コスモは上空にいる、敵のリーダーへと近付く。
「もう、こんなことはやめるんだ!」
「う、うるさい! 食らえ!」
敵はコスモの首をはねようと、剣を振るってきた。
コスモはそれをかわし、現在の位置よりも、更に空高く飛ぶ。
「ていやああああああああああああああ!!」
そしてそのまま、コスモは空中で飛び蹴りのような体制を取る。
先程のように、メタルウイングからエネルギーを噴射させ、加速。
敵に一撃を食らわせる。
「ぐ……ぐっ!! ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!」
バキッ!
敵は、剣で必死にコスモの蹴りをガードしているが、すぐに剣は砕け散る。
「なっ!?」
剣が砕けたことが衝撃的だったのか、目を見開き、敵はコスモを見る。
「くっ、くそっ……なんて力だ。悔しいが、流石だ……。まさか【剣聖】が復活していたとはな……。見くびっていた……。そうか……これが……これが【剣聖】の真の力かあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」
コスモの空中飛び蹴りにより、敵は地面に向けて吹っ飛んでいった。
「終わった……」
当たる瞬間手加減したので、死んではいないだろうが、全身の骨が折れている可能性がある。
おそらく激痛だろう。
いや、気を失っているか。
コスモは地面へと降りる。
すると、敵のリーダーは、やはり気を失っていた。
体中がボロボロで危険な状態だ。
「魔剣さん。全部元通りにお願いします」
『ああ。【ジェントルワールド】!!』
コスモは魔剣を空に向けて振るうと、緑色の衝撃波が拡大し、闘技場全体を包み込んだ。
すると、敵全員が完全回復し、意識を取り戻した。
「あれ? あたいは確か……ってひぃぃぃぃぃ!!」
敵のリーダーはコスモを見て、怯えているようだったが、すぐに冷静になり立ち上がる。
「死ねええええええええええええええええええええええええ!!」
【ジェントルワールド】により回復した剣を、コスモに向けて振るった。
だが、コスモはその剣を叩き落とした。
「ぐぬぅ……」
敵のリーダーは、一歩引いた。
取り巻き達は、完全に怯えている。
「もう悪いことはしないって、約束して」
「へ、へっ! どうかな?」
強がっている。
だが、ここでしっかり脅しておかないと、今後も誰かしらが被害にあってしまうだろう。
「魔剣さん、脅したいんだけど、なんか派手な能力ない?」
コスモは小声で言った。
『残念だが、今の私には回復しかできない。……いや、できることがある』
「なに?」
『光る! 鳴る!』
「じゃあ、それでお願い」
コスモが魔剣を構えると、その動きに合わせて魔剣が禍々しく光った。
そして、激しい音が鳴った。
まるで、強力な魔法やスキルを使ったかのような、凄い音だ。
更にコスモが剣を振るうと、金属音を派手にしたような音が鳴り響く。
それを何回も繰り返した。
「ひぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「今度悪いことしたら、本当にやばいからね?」
なにがやばいかは、具体的に考えてない。
考えないで話すと、こうなるという好例だ。
「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
敵は全員その場から撤退していった。
取り巻きも、リーダーの後に続いた。
「おい! ここでなにがあった!? って、お前らは確か指名手配犯の……」
兵士たちがここ、元廃闘技場の外にいるようだ。
派手にやり過ぎたかもしれない。
コスモはユリを抱え、裏口からこっそり脱出するのであった。
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