23.SRランク冒険者アイドル……?
次の日。
「や、やっと次の街が見えてきました!」
ここに来るまで、森ばかりであった。
2人は、やっとの思いで、次の街に到着した。
「今日は野宿する必要は無さそうだね」
「はい! フカフカのベッドで眠れます!」
「この前の報酬はまだまだあるからね。フカフカのベッドがある宿に泊まるとしよう」
装備などは、ヨシムラから無料で貰ったので、まだまだ金が余っている。
高い宿に泊まることも可能だろう。
「そうですね!」
今はまだ昼だが、今の内から宿を探そうということになった。
この街も、地元の街とほとんど変わらない雰囲気なので、探しやすそうだ。
「アオリイイイイイイイイイイイイインンンンンンンンンン!!」
歩いていると、叫んでいる青年エルフを発見した。
なぜ叫んでいるかは不明だ。
「だ、大丈夫ですか!?」
ユリは駆け寄る。
「ちょっと、ユリ!?」
コスモも後に続く。
だが、ユリの心配とは裏腹に、相手のエルフは至って元気そうであった。
「ん? 大丈夫だぞ? ちょっと興奮しちゃってな」
エルフは、鏡をコスモとユリに見せつけてきた。
そこの鏡には、青い髪の子が映っていた。
「ただの鏡じゃないんですね。アイテム?」
コスモは訊いてみた。
「ああ、これはアオリン☆ミラーって言ってな。アオリンの配信を見ることができるんだ」
「アオリン……? 配信……?」
コスモは聞きなれない言葉に、首を傾げた。
だが、ユリは何か思い当たるものがあったようで……。
「アオリンって……SRランク冒険者アイドルのアオリさんのことですね!」
「ユリは知ってるの!?」
「はい! アオリン☆ミラーは初めてみましたが、噂は聞いたことがあります! 確か配信っていうのは、アオリさん発の言葉で、リアルタイムで自身の姿を届けることですよね?」
ユリが言うと、当たっていたようで、エルフは「うんうん」と頷いた。
「そうだな」
「ってことは、今も配信中ってことですか!?」
「いや、それは違うな。これはアーカイブ機能って言ってな、前に配信された内容を見ることができるんだ」
「なるほど! だから今もその鏡にアオリさんの姿が映し出されているんですね!」
「そういうことだ」
コスモは、それについての知識は0であった。
「ユリもファンなの?」
「ファン! って言いたいですけど……私達の地元だと流行ってなくて、私もよく知らないので、本で読んだだけです」
「確かに、私も配信なんて、初めて聞いたよ」
と、その時である。
「っておいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!??」
またしてもエルフが叫んだ。
「通知が来た!!」
「「通知……?」」
「ああ! 簡単に言うと、アオリさんから、このアオリン☆ミラーを通じての、連絡のことだ……って! それ所じゃないぞ! 明日ここにアオリンが来るらしい!! うひょー!!」
明日、アオリがここに来る……?
この前はSRランク冒険者のミアカが、コスモの元に来た。
偶然だろうか?
(こうも、SRランク冒険者が近づいてくるのは何か理由があるのかな?)
ミアカは何かを忘れていたような雰囲気であったが、もしかして……。
(やっぱり、ミアカにも何か使命があったのかもね)
と、コスモが考えていると。
「コスモさん! 私、ライブを見てみたいです!」
「ライブって……ああ、さっきの鏡にアオリさんが歌ったり踊ったりしてた姿が映っていたけど、それのこと?」
「はい! だ、駄目ですか?」
今のアーカイブと呼ばれる記録をみた限りだと、あまり好戦的な子では無さそうだ。
殺しにかかって来る可能性は、おそらく少ないだろう。
(【剣聖】だって、言いふらさなければ、大丈夫か)
コスモはOKを出した。
「やったー! 楽しみです!! いやー、明日は楽しみましょうね!!」
ぴょんぴょんと、飛び跳ねながら、ユリは喜んだ。
(そんなに嬉しいの……?)
そして、その日はフカフカのベッドがある宿に無事に泊まれた。
翌日。
「皆! こんにちは! SRランク冒険者アイドルのアオリンです☆」
会場が盛り上がる。
ちなみにここは闘技場である。
「アオリイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!」
(楽しそうだね)
ユリも大きな声で叫んでいた。
「今日は集まってくれて、ありがとう! 今日はとっておきの企画があります!」
なんだなんだ? と周囲から声が聴こえる。
「ライブの前に、ここにいる皆の中の誰かと、戦いたいと思います! 勿論、安全に考慮したルールだから、安心してね! じゃあ、皆! 私と戦いたい人!! あっ、ちなみに終わったら、挑戦者さんにも、一緒に歌って踊って貰います!!」
はい! はい! と、多くの人物が手を挙げる。
本来であれば、SRランク冒険者には勝てないだろう。
だが、安全に考慮したと本人が言っている上、アオリと歌って踊れるチャンスということもあり、多くの人達が手を挙げている。
「はい!」
コスモは自身の右手を見る。
「え?」
「コスモさんが歌って踊っている所、見てみたいです」
ユリがコスモの手を挙げていたのだ。
とは言っても、これだけの人数だ。
まさか、当たる訳……。
「じゃあそこの、紫のポニーテールの子!」
ユリがニコリと笑う。
「強運ですね!」
「強運……なのかな?」
またしても、SRランク冒険者と戦うこととなってしまった。
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