ブラックペギーの末路 -4-
「ここは?」
「目を覚ましたようですね、ここはわたしの家です」
「炎の大魔導師の家!?」
ブラックペギーはベッドから飛び起きました。
すでに、かけてあげていたキルトは、寝ているあいだに蹴り飛ばしています。
ずっと、ペンギン族でもないのにヒョウザリン山に住み続けていたのですから、本当はただのカラスとはいえ、暑がりになっているのでしょう。
「はい。あなたはわたしが連れ帰りました。何か異論はありますか」
「異論もなにも、なぜ俺様を殺さない!? 俺様は無差別にイワトビーどもを苦しめた。殺されたって文句は言えない立場だぞ!」
イキリ立っているペギーを見て、思わずため息が出てしまいます。かわいそうな子です。
「ペギー。あなたは皆に威圧的な態度をとりながら、子分のように扱ってはきましたが、誰も殺してなどいないではないですか。そんなあなたを、なぜ死刑にまでしなければいけないのですか。それに、もとはといえばあなたのほうこそ先に殺されかけています。やられたらやり返す。無差別にやり返すのは褒められたことではありませんが、気持ちは大いにわかります。ただ、罪を犯したことには変わりありません。よって、わたしはあなたを監視すること含め、保護します。イワトビーの長老から許可は得ています。ヒョウザリン山からは追放となりますが、ブラックペギーはそもそもカラスです。なにも氷山で無理して暮らす必要もありません。ここ地上で季節を感じながら、生きていくことに不都合はないはずです。――泣いているのですか」
ペギーは目にいっぱい涙を溜めながら、鼻をぐずつかせています。
「泣いてなどいない」
そういいながら、涙も鼻も止まっていません。
長いあいだ、つらく苦しかったのでしょうね。
悪意ある者に貶められ、憎しみにさいなまれるような負の感情なら、わたしにも覚えがあります。
「でもどうして、そんな、俺様なんかを……。ミリアおばさん、だったか? おばさんが俺様みたいな悪者を抱え込むなんて――。なんのメリットもないだろ……」
ペギーはベッドから落としたキルトを拾いながら、まだメソメソしていますが。
悪者を抱え込むとか、問題はそこではありません。
「いいですか。最初に一番重要なことを伝えておきます。ミリアおばさんではなく、ミリアお姉さんです。絶対にまちがってはいけません」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます