ブラックペギーの末路 -2-

「さっきからうだうだうるせえんだよ! みんなまとめて死んでしまえ!」


 ブラックペギーから怒りに任せた連続攻撃が繰り出されました。


 が、ソニックブームはフレデリック君のブリザガードで防御し、爪、嘴攻撃はモアファイアーで応戦すると、ブラックペギーはそうそうに攻撃の手立てがなくなったのか、くやしそうにしかめ面をしながら、その場に立ち尽くしてしまいました。


「ぐぬぬ……」


「もうやめてくれ、ペギー。この通り、謝ってるじゃないか。これ以上の争いは何も生みださない。ペギーもわかっただろ。お前の攻撃は魔導師二人この方たちの前には無力だ。かないやしない。ほら、上空に飛ぶのはやめて、大人しく地上に降りてこないか」


 さきほどまで土下座をしていたイワオが、頭を上げてブラックペギーを見上げています。


 その顔はまるで、憐れむものでも見ているかのようです。


「うるさい、うるさい、うるさい、うるさーーーーい! いいからおまえは少し黙ってろ―――――っ!」


 脂肪に包まれた背中ではなく、今度は無防備な顔面目がけて、ブラックペギーは大きな黒い翼を羽ばたかせ、猛スピードで急降下してきました。剥き出しにされた鋭い爪が光っています。引き裂かれたらひとたまりもないでしょう。


 ところがです。四面楚歌のはずのイワオは、攻撃を避けようともせず、それどころかさもおかしそうに、伏せた顔の影に嘴の端を寄せて、ニタリと笑っています。


 まるでブラックペギーの乱心を、心から楽しんでいるように映ります。


「だから、そこまでにしておきなさい、ブラックペギー。もう決着はついています。あなたは魔導師わたしたちには勝てません。観念してください」


 フレデリック君のブリザガードでイワオの前にガード魔法を張ってもらうと、わたしはモアファイアを掌にかざし、ブラックペギーの前に立ちはだかりました。


「クッ、魔導師になんか用はないんだ! 俺様はこいつが、イワオが憎くてたまらないんだ……! 自分が悪かったなんて言っておきながら、なんでか被害者面してるようなこいつが……!」


 飛びかかってくるさなか、ブラックペギーの大きな三角のコブがまっぷたつに割れると、そこから不気味に輝く紫の発光パープルスティーブが私たちにむかって発射されました。

 

 ソニックブームでも、爪でも嘴でもなく、どうやらあの発光パープルスティーブこそが、ヒョウザリン山のイワトビーたちいっせいを震え上がらせた、真の攻撃技のようです。

 












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