氷の大魔導師の策 -1-

 一方そのころのフレデリック。


「やい、金髪。おまえ、焼いて喰ったらおいしそうだな」


「ブラックペンギンのくせに、焼いて食べるの? 生で食べないの?」


「誰がブラックペンギンだ! おれっちはブラックペギーだ! 名前間違うなんて、一番失礼なやつだろ! あやまれ!」


 ただの黒い大きめのペンギンがギャーギャー騒いでるな。子供っぽ。


「あ〜、はいはい」


「あ〜はいはい、じゃない! 金髪! おまえ、置かれた立場わかってんのか! 四つ足木の棒にしばられて、吊り下げられてんだぞ! このまま火を焚べられたら、丸焼けだぞ! 絶体絶命だぞ! そこんとこ、理解してんの!?」


「あ〜、はいはい、そうですね」


「だから、そのはいはいってのが、ムカつくんだよー!」


 四つ足というか、人族だから前足の方は手なんだけど。


 そんなのどうだっていいか。


 泣き喚こうが、状況は変わらないわけで。


 氷魔法を放ったところで、ブラックペギーは氷属性だから、ダメージも与えられないし。


 大人しく、ミリアの助けを待つしかないかな。


 でも、来てくれるかな。


 普段から散々怒らしてばかりだし。


 あ、ウォークのレアモンスター交換チラつかせてるから、大丈夫か。ぼくが死んだら、手に入らなくなるもんな。


 よし。それならミリアが来るまでに殺されてしまわないよう、時間を稼ぐか。


「ブラックペギーさん」


「あん? 突然さん付けなんかして、どうした?」


「ブラックペギーさんはどうして、たったひとりなの?」


「ーーたった、ひとり!?」


 たじろいだ。ここ脛かな。


「だって、ヒョウザリン山に暮らしてるのは、ブラックペギーさん以外全員、イワトビーたちでしょ。みんな、イワトビーらしく、眉もキリッてしてるよ。ペギーさんだけ、眉、消滅しちゃってるじゃない」


「眉が消滅!?」


 ショックを受けてるようだね。


 疎外感を刺激されたかな。


「ブラックペギーにもともと眉なんてないんだ! 変なこと言うな!」


「そうなの? ぼく、悪いこと言っちゃったかな。世界に、たったひとりきりのブラックペギーさんに向かって……」


「黙れ、小僧! ひとりきり、ひとりきり、言うなー!」


 肩で息してるな。


 これは相当、こたえたかな。


「あのね、ペギーさん。ペギーさんさえよかったら、ぼくが友だちになってあげるよ」




 


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