ふたりの大魔導師はペットのために最善をつくす -3-
「なんかなあ、思っきし体がだるかったペンよ。食欲もあんまりわかないっていうか。でも、もう大丈夫ペン。なんともないペンよ」
トビーはワカサギ釣りをしながら、ひょいパクひょいパクとワカサギを生のまま、上を向いて開いた嘴の奥に落としています(眼鏡がないのでぼんやりシルエット)。あれで、味がわかるんでしょうか。
「コーンフレークのほうが好きかな……」
味わっていたようですが、味覚は世紀末です。すっかりお手軽シリアルに、大事な何かを侵されています。
とはいえ、氷点下の故郷に帰ってきたことで、トビーは体調を回復させたのでしょうね。
昨晩は結局、フレデリック君が風邪をひいてしまわないよう、トビーの周辺だけ避けて、ウォームバリアをフレデリック君まで飛ばしました。
フレデリック君は何も言ってきませんが、暖かかったでしょうから、そのことに気づいているはずです。
先ほどから、チラチラこちらを振り向きながら(ぼんやりシルエット)、「あり、あり」と幾度となくつぶやいています。
おそらくお礼を言いたいのでしょうが、恥ずかしくて言えないのでしょう。わたしは大人ですから、その気持ちだけでじゅうぶんです。
「あり、あり…えーい、素直にお礼を言うんだ! あり、あり、あ…り……!? ミリア、伏せろ!」
突然、強風になびいた小さな硬質物が、目の前を吹き抜けました。顔をかすめたようで、手で頬にふれると、ぬるりとした血の感触があります。
「お前たち! こんなところで何やってるペン!? あ、そこにいるのはトビー!? ティア鉱石を人族なんかに奪われ、魔力も失い、ただの脂肪の塊となってヒョウザリン地方から追い出されたお前が、どうしてこんなところにいるペン! 勝手に帰ってきてもいいとは言ってないペンぞ! ここにお前の居場所なんかないペン! 今すぐ出ていけペン!」
「そうペン! 脂肪は出ていけペン!」
「お前みたいな脂肪は、いらない子だペン!」
氷山の麓のほうから、徒党を組んだイワトビーたちの声が聞こえてきます。まったく見えませんが、語尾で確定です。それにしても、自分たちの体型を顧みず、よく脂肪、脂肪、いえたものです。
今し方の攻撃も、あの群れから放たれたようですね。おそらく、
「めっちゃ怒ってるよ。どうする? トビーも治ったし、帰る?」
フレデリック君の股の下にすっぽりはまって、トビーはうつむいてしまっています(ぼんやりシル以下省略)。
「いいえ。このまま先を進みます。しかしその前に、やるべきことがあります」
このまま人族の住む世界に戻ったら、トビーはまた調子を崩してしまうかもしれません。それに……故郷や仲間のことが、一生のトラウマとして残ってしまうかもしれません。まだ子供のトビーに、消えない重荷を背負わせるわけにはいきません。
「さて。攻撃を先に仕掛けてきたのはあなたたちですから、遠慮なくいきます。メガトンファイアー」
雑魚は一発、蹴散らしてやればいいのです。
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