氷の大魔導師にお漏らし疑惑が生じたので、炎の大魔導師がお世話をする -8-

 しかし魔物は本来、館内に入ってはいけません。


「そういうわけで、フレデリック君はトビーと一緒に、どこか別の場所で待っていてもらってもいいですか。わたしはもう少しだけ、レシピを解読したいので」


「うん、わかった! トビーと一緒に、となりの村に行って、時間潰してるね」


「ありがとうございます。そんなに時間はかかりませんので、一時間もしたら、わたしもそちらに向かいます」


「ごゆっくりペーン」


 トビーもごきげんに、手を振っている。


 心なしか、わたしがいないほうがうれしそうに見えるのは、気のせいでしょうか。





 パンフレットを使って、瞬間移動。


 古代本棚前に戻った。 


 解読が、あと少しなのだ。


 やはりピルピルのレシピに、すべてが記されている。


 特に、ここ。


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 ふむ。なるほど。それで――。


 次のページを開いたら、重要な部分が切り取られていた。


 いや、切り取るなど、なまやさしい感じではない。


 乱暴に、ちぎり取られていた。


 偶然とは思えない。


 この個所をわざわざ選んで、読み解けないように、レシピが完成しないように。悪意を持って。


「……」


 この本を借りて、ハクハク大図書館を後にした。


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