夢喰いバクは夢見るように愛したい

弓葉あずさ

プロローグ 悪夢がふわふわに!

 いつからか、悪夢を見ることが多くなった。


 何もない真っ白な空間に自分だけ放り込まれて出られないとか。

 古い不気味な洋館で、血まみれの人形に追いかけられるとか。

 今みたいに、鬱蒼うっそうとした森の中で、たくさんの黒い手に追い回されるとか……!


 夢の中は、なぜか、身体が重い。

 必死に手足を振ろうとするのに、思うように走れない。

 ダメ、捕まる……!


「きゃっ……!」


 黒い手は、私の手に、足に、絡みついてきた。

 容赦ようしゃなく引き倒される。

 痛みは、ない。でも、振りほどけない。どんどん森の奥へと引きずられていく。

 イヤ……! 誰か……!


「助けて……!」


 ふわり、と。

 その瞬間、まぶたに優しい感触を感じた気がした。

 思わず瞬きをしたら――私をつかんでいたいくつもの手が、ショートケーキになっていた。


「えっ?」


 暗かった空がパステルカラーな水色になる。

 パラパラと降ってきたのは、キャンディー?

 気づけば地面もふわふわの綿アメみたい。

 ファンシーなクマやネコのぬいぐるみが私を囲んで、カラフルなマカロンを「どうぞ」と差し出してきた。


 えっと。えっと、これって――。

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