第2話 9月21日15時半

「ろー、先に校庭で準備しといて。俺面談終わったら行くわ」


「うーい」


あだ名というものは名前の前半をそのまま使うか、変化させるかが多いのではないかと思うのだが、それでは言いにくい、とみんなから『ろー』と呼ばれている。


僕は鳥丘高校3年生。


飛行機研究部に所属している。


飛行機研究といいつつも、大会に出るような研究などしていない。


マニアが学年に1人でもいたらいいほうで、ほぼ帰宅部だ。


飛研の唯一といっていい見せ場は、10月頭にある文化祭である。


校庭に来てくれたお客さんにつくった飛行機を飛ばして見せ、部紙を配る、というものだ。


手のひらサイズの超小型飛行機を、今年も部室にあった設計図通りつくった。


変えたのはデザインだけだ。


そんな発表でも、小中学生はかなり喜んでくれる。


部員が少なく、メインの活動も文化祭前後だけなので、引退せず3年間所属する人が多い。


そんなわけで今から3学年13人と飛行テストをする。


「5機ともいけますね」


「うん、ちゃんと上がってた」


「じゃあ2年で片付けときます。お疲れ様でした。」


「ありがとう。お疲れー」



どうやら面談は終わらなかったようだ。佐藤は来ずじまいだった。

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