石ころ
山我四桜
石ころ
「何してんの?」
少女は幼なじみの男に尋ねた。
「石ころ削ってんの」
さて、何故石を削っているのだろうか。
「なんのために?」
少年は少女の疑問に食い気味に答えた。
「お前ら子供は石ころと同じぐらいしか価値がないんだから口答えするなってあいつが殺されちゃったから」
あいつとは少年の弟の事を言っているのだと少女は理解した。
少年の弟は聡明だった。
紛争地帯に生まれながらあらゆることに興味を持ち、武器の扱いや戦略の練り方などを直ぐに覚えた。
そして、彼にとって最も身近だった飢餓に興味を示し、さらに紛争に興味を持った。
彼はどうして飢餓がおき、紛争が続いておる理由を明確に理解した。
そして、それを大人に説明し解決しようとした。
まさに、英雄だった。
彼は少ない幸運を使い数多の不幸に見舞われながらも偉業をなそうとしたのである。
しかし、天才や英雄はいつも愚かな権力者に殺されてしまうものだ。
大人に説明する彼をただうるさいと言って紛争でこちらの軍団を指揮する大人たちはその弟を銃で撃ち殺した。
大人である彼らには本当にうるさく聞こえただろう。
なぜなら彼らは英雄である彼の言うことな理解出来てしまうからである。
しかし、彼らは受け止められなかった。
なぜなら彼らがしてきたことは無意味になり、罪であると認識してしまうからである。
元々子供だった彼らは大人になってからその本当の意味を、価値を理解した。
だから彼らは紛争を望んでいる。
仲間にも自分にもまだ戦う必要があると嘘をついて。
彼らはその素晴らしい考えを頭に残さないように即座に元凶を殺した。
そうして幸せな停滞を続けるのである。
少年の弟が死ぬところを見て兄である彼は何を思っただろう。
少女はふと思ったこと呟いた。
「私たちも石ころにしかなれないのかな」
「俺も君もきっと石ころのままだよ」
2人はその後何も話さなかった。
やがて少女は彼が石を削っているのを見るのをやめて大人達の元へ向かった。
少年の弟を殺し、数多くの子供を死に追いやっている大人たちに体を差し出すのだ。
男ではない女がここで生き残るにはそうするしかないからだ。
好き勝手されるのに慣れてしまうほど自分がなぜ生きているか分からなくなる。
多くの女はみんな楽しそうにするけれど少女には分からなかった。
少女はきっと彼と彼の弟の行動を見守っていた頃がきっと楽しかったのだろうなと悟った。
この日以降2人はなかなか出会えなかった。
出会えたのは3週間後彼が死体として運ばれた時だった。
彼は両手を胸で強く握り締め体を縮こまらせた状態で死んでいた。
彼は銃に撃たれ死んだあともしばらく意識はあったもののすぐこの体制になり死んでしまったという。
彼の手に違和感を覚えた少女は両手を解くように外していった。
手には六角形のような形の石と糸が握られていた。
彼がどうしてこんなものを大事そうに握り死んで行ったのか他の子供達は分からなかったが少女は何かを察したのか彼と同じようにそれを握るのであった。
石ころ 山我四桜 @mimikakinari8
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