第30話
テトの釣ってきたお魚で、パーティーをした翌朝。
三匹ともお休みの予定だったのだが、ロバート様から「至急来てほしい。サチは変身してから来るように。」と連絡が入る。私たちはいそいそと準備を始める。
「急病人でも出たのかな?」
と、呑気に構える私だったが、ジルは警戒しているようで、いつもより念入りに護身用の武器の整備をしていた。
◇◇◇◇
「ああ、来たね。」
ロバート様に迎えられ、私たちが執務室の中に入ると先客がいた。
「マーネ殿下……。」
ジルが、不安を帯びた声で呟く。殿下の隣には、もう一匹、昨日私が治療した白猫がいた。
「すまない。どうしても礼をしたくてな。」
「断ったんだけどねぇ。」
ロバート様が少し疲れたようにそう言った。てくてく、と白猫が私に近づき、私はびくり、と体を震わした。
「急に来てごめんなさい。どうしても、貴女にお礼を言いたくて。」
「え……。」
思わず声を漏らした私に、ジルが庇うように私の前に立った。だが、私の意識は別の所にあった。この白猫の声は……。
「治してくれてありがとう。おかげで、もうどこも痛くないわ。」
あまりの衝撃に私は思わず、俯いていた顔をあげた。フードで隠していた顔が見えてしまうほど。
「殿下には、病み上がりだし、貴女たちの迷惑になるからって止められたのだけど、私が我儘を言ったの。ごめんなさい。」
彼女の首には、『ねこダリ』で描かれている、聖女の証のピンクの宝石が施された首輪は見当たらず、逆に私がよく目にしていたものがそこにはあった。
「……『戦国大名に恋してる』」
『戦国大名に恋してる』のグッズであるアクセサリーが首輪にはつけられていた。小声でぽつりと呟いた私の言葉に、白猫は目を丸くした。
「へ?……ってもしかして、貴女!」
「おい、アッコ。大きな声を上げてどうしたんだ?」
マーネ殿下の言葉に、今度は私が目を丸くした。
「貴女、アッコなの……?本当に?」
「その声、え、何で……。」
もう二度と会えないだろうと思っていた、私の唯一の親友、アッコがそこにいた。……お互い、猫の姿だったけれど。
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