第26話
「マーネ、久しぶりだね。」
「ああ。」
ロバート様はにこり、と笑った。目の前にいる黒猫は、ロバート様そっくりの毛並みの美しい、気品あふれる猫だ。そして、首には煌びやかな宝石を身に着けている。
「あちらは、マーネ王太子殿下。ロバートの従兄弟にあたる方だ。」
(え!)
こっそりと私に耳打ちしてくれたジルの言葉に心底驚いた。声を上げなかったことを褒めてほしい。ロバート様の従兄弟ということは、ロバート様は国王陛下か王妃様の兄弟ということだ。ロバート様が、王族だとは知っていたが、ここまで国王夫妻に近しいとは思っていなかった。
ローブのフードを目深に被っている私は、既に失礼な態度だろうけれど、取り敢えず今出来ることとして深々と頭を下げた。
「良い。こちらが無理を言って来てもらったのだ。」
私の礼を、マーネ殿下は止めた。私は小さく頷き、頭を上げた。
「それで、マーネ?どうして女の子が良いのか教えてくれる?」
そう。この国一番の回復魔法を使えるロバート様ではなく、私を指名した理由を、ロバート様も私たちも、まだ聞いていなかったのだ。
「う……叔父上……。」
マーネ殿下は言葉を詰まらせた。だが、すぐ諦めたように言葉を続けた。
「……治療を頼みたい猫は、私の番なんだ。」
番……?そんな設定あったかな、もうこちらの世界に来て暫く経っているから、忘れているだけだろうか。不思議そうにしている私に、またジルが耳打ちした。
「王族だけは、番がいるんだ。ロバートも会っていないだけで、どこかにいるはずだ。」
なるほど、と小さく頷く。
「番が、自分以外の異性に触れられると身を切られるより辛いと聞くからね。それで女の子の、回復魔法を使える子が必要だったんだ。……それよりマーネ、いつの間に番を見つけたんだ?」
「あ、ああ。最近出会ったんだ。急に王城の中庭に現れて、聖女の力を持っているようなんだ。真っ白の、とても可愛らしい猫だ。」
私はジルとテトと顔を見合わせた。マーネ殿下とその猫の出会いは『ねこダリ』の王子ルートのオープニングと全く同じものだったからだ。
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