第20話


 翌朝。



 いつものように、ロバート様の執務室へ転移する。今日は、ジルが同行し、テトはお留守番だ。治療院に行くのに、本当なら三匹でも多いんだとロバート様は困ったように話していた。



 変身魔法で、真っ白なふわふわの猫から、錆柄のぽっちゃり猫に変わる。変身していても用心のため、大きめのローブを身に着け、目深にフードを被った。ロバート様は「うん、上出来だね。」とニコニコと褒めてくれたが、ジルは「落ち着かないな。」と少し不機嫌そうに呟いた。




 「まぁまぁ。じゃあ、早速行こうか。」


 ロバート様の声掛けで、目的の治療院へ転移した。ドキドキと高鳴る心臓を、落ち着かせるように大きく息を吸い込んだ。





◇◇◇◇




 治療院は、白い建物で、中は薄暗く、空気が悪いように感じた。治療院のスタッフの一人が、私たちを案内してくれる。そこには、私が想像した以上の景色が広がっていた。




「こ、こんなに……?」




 治療院にいる患者たちは、思った以上に重病だった。もう自力で動けないほどの大怪我をしている者、病に侵され殆ど意識が無い状態の者……私は息を飲んだ。




「……多少怪我をしていても、病に侵されていても、家族や周りの者が看病できるのであれば、家庭で生活できるんだよ。ここにいる者たちは……。」




 もう、家では生活できない者。ロバート様はそこまで話さなかったけれど、私はそれを肌で感じ、体が冷えていくのを感じた。



「行こう。」



 ロバート様の声掛けと、ジルが私の背中を優しく押してくれたことで、私はハッとして足を進めた。

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