第17話




「ククク……可愛いなぁ。」




 必死で頭を下げる私の頭の上に降ってきたのは、揶揄うようなロバート様の声だった。





「え、えっと……ロバート様?」




「ふふん、いいよ。教えてあげる。」




「いいんですか!」




「うん。可愛い頑張り屋さんは大好きなんだ。」




 ロバート様は、自分の鼻を私の鼻に近づける。もう後少しで、鼻同士が触れそうになった瞬間、ジルが割って入った。





「やめろ。」




「もう、ジルは怖いなぁ。」




 ジルはぎゅっと私を抱き締める。私の激しくなった動悸が、ジルに聞こえてしまいそうで恥ずかしい。ロバート様はヘラヘラと笑いながら、私から離れた。




 そして、ジルは私を守る為に、ロバート様へ私がこちらの世界にきた経緯を説明してくれた。




「それでこんな不思議な魔力なんだね。これから教えるのが楽しみだ。」




 にっこりと笑ったロバート様を見て、私は味方が一人増えたと思えてホッとした。






◇◇◇◇





 家に戻ると、テトは張り切って結界魔法を掛けに出掛けた。




「ロバートさまに、ほめられたからね!もっとがんばるんだ!」




 テトのふわふわの尻尾をぴょこぴょこさせて、やる気を見せていた。






 そして、私とジルはと言うと……。





「あ、あのー……ジル?」





「何?」




 ジルは機嫌悪そうに聞き返した。




「そろそろ離してほしいな~。」




「駄目だ。消毒してるから。」




 ロバート様の部屋から戻ってからずっと、ジルは私をぎゅうぎゅうに抱きしめていた。ロバート様が近くて嫌だったとハッキリ伝えられ、私は身体中熱くなった。





「ジル。私、頑張るね。」




「サチ。」




「私、ジルとテトと居られるのが、一番幸せなの。だから頑張りたい。」




 ジルは何も言わずに、自分の顔を私の顔に擦り付けてきた。ジルのふわふわの毛が擽ったくて、そして幸せだった。




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