番外編:変遷 ⑨
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更新が遅くなり大変申し訳ありません。
引き続きお楽しみください。
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「……暇ね」
クラウディアから有無言わさず早退させられた翌日、ジョアンナは休暇を取らされ暇を持て余していた。ジョアンナは大丈夫だと訴えたが、クラウディアが彼女の体調を心配したため出勤は許されなかった。
クラウディアは公爵令嬢であり、王太子妃候補という立場にあったのに使用人であるジョアンナ達に優しい……いや、優しすぎる。今後はテオドールと籍を入れ、公爵夫人、そして王弟の妃となる。主の優しさが貴族社会を生き延びる上でマイナスに働くのでは無いかと過り、そして首を振った。
「……それは無いわね」
クラウディアが辛い思いをすることは、テオドールが許さないだろう。クラウディアがクラウディアらしく過ごせるためなら文字通り何でもするような男だ。心の底から想い合う二人を思い出して、いつもなら頬を緩めるというのに……今日のジョアンナの心には暗い影が落ちた。
テオドールとクラウディアのように、愛し合う人と人生を共に歩むことなんて自分には到底無理だ。そんなことずっと昔から分かっていたのに、ほんの少し前まで何も気にしていなかったのに、今はそのことが酷く辛い。
「……はぁ」
大きな溜息が部屋に響いた。彼とたった一夜過ごしたベッドはシーツも替えたというのに何故だか心を騒つかせる。
「買い替えようかしら」
ぽつりと呟いた言葉は、とても良い案のように思えた。シンプルな白いシーツから柄物のシーツに替えてしまおう。ちょうど良い機会だ、少々草臥れた布団も買い替えよう。もう二度とあの夜を思い出さないように。
パンッと頬を叩くと勢いよく立ち上がり、いそいそと出掛ける準備を始めた。クラウディアがくれた貴重な休日だ。明日からは前を向いて仕事をするためにも、心配性の主に悲しい顔をさせないためにも、今日一日で気持ちを切り替えよう。自分は似合わないからとクローゼットの奥底に仕舞っていた、母がプレゼントしてくれた明るいブルーのスカートを引っ張り出し、身に付けてみるとそう悪くは無いと思えた。
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