第39話



 クラウディアの答えを聞くと、王妃は頷き「私たちの要らぬお節介でした。申し訳ないわ。」と頭を下げ、国王と共に退室した。



 レジナルドはバーネット公爵に悪く言われたことで不満そうに口を尖らせていたが、王座が奪われる危険性があることを聞き、流石に顔面蒼白となっていた。アネットが上手に慰めながら、退室していった。こっそりクラウディアにウインクすることを忘れずに。




「……お父様。」



 恐る恐る近付くと、バーネット公爵はいつものようにむっつりと眉間に皺を寄せた。



「……悪かったな。」



「え……。」



「お前たちに話が行く前に解決しようと思っていたが、陛下を止められなかった。」



「そんな……お父様、助けていただいてありがとうございます。」



 クラウディアが頭を下げるが、バーネット公爵の表情は変わらない。



「礼は良い。それより……たまには帰って来なさい。あー、その、使用人たちが会いたがっている。お前が急にいなくなり酷く寂しがっている。」



「そうなのですか?」



 クラウディアは驚き、目をぱちくりとさせた。公爵家にいた頃、使用人たちとは親切だったが距離があった。クラウディアがいないと寂しいと思うとは思えなかった。



「……お前は多忙だったからな。使用人たちも家に居る間は休んでほしいと声を掛けるのを極力控えていたようだ。だが、お茶も菓子もお前が好みそうなものをいつも一生懸命探したり作ったりしていた。それが、お前とお別れの言葉一つ言えないのか、お前の嫁入り準備だって一緒にしたかったと散々叱られた。」



「……っ」


 クラウディアの目にじわりと涙が浮かぶ。ずっと独りぼっちだと思っていた毎日だった。だけど、クラウディアを支え続けてくれた人たちがいたのだ。今更それに気付くことに寂しさが沸いた。




「バーネット公爵。帰って来てほしいと思っているのは、使用人たちだけではないのでは?」



 テオドールは揶揄うように笑った。バーネット公爵は苦虫を噛み潰したような顔で「……私にも顔を見せなさい。」と呟いた。クラウディアの涙はもう止められなかった。






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