第37話
漸く、国王陛下と王妃殿下が謁見の間に現れた。テオドールの姿を見つけると目を丸くしている。
「なっ……なぜ兄上が……。」
「愛する婚約者が呼ばれたんだ。同席しない理由がない。」
「はっ、なっ、愛する……?」
国王が言葉を失うのも無理はない。テオドールはクラウディアが婚約者になるまで、浮いた話一つない男だったからだ。それなのに、目の前にいる兄はクラウディアの腰を引き寄せ、ぴったりと寄り添っている。
暫く戸惑う国王だったが、コホンと咳ばらいをして本題へ入った。
「クラウディア嬢、私たちのせいで意に沿わない婚約を結んでしまい申し訳ない。」
「え……。」
「兄上は何やら愛する婚約者等と言っているが、クラウディア嬢はこれほど年齢の離れた、平民のように暮らす堅物な男は嫌だろう。」
「そ、そんなことありません……!」
クラウディアは拳を握り、声を上げるが国王には届かない。
「最近ではクラウディア嬢まで市井に連れまわしていると聞くではないか。公爵令嬢へ何たる仕打ちだ。」
クラウディアは内心パニックになった。まさか自分の行動のせいでこんな可笑しなことを国王は言い始めたというのか。そんなクラウディアの気も知らず、国王は嬉々として話を進めていく。
「兄上に優秀なクラウディア嬢は勿体ない。何、心配はいらない。隣国の王子が婚約者を探しているようなんだ。彼は勤勉だし誠実な人間だ。兄上との婚約は解消して、彼との婚約を結べるよう隣国とも話している。」
「なっ……!」
クラウディアは顔を青くした。既に隣国にも話がいっていると言うことは、撤回も難しいのではないか。クラウディアがテオドールの服の端を思わず握ると、テオドールはクラウディアに頷いて見せた。
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