第29話
時間が経つに連れ、少しずつ気持ちが落ち着いてきたクラウディアは改めて自分の周りを見渡し顔を赤らめた。クラウディアはテオドールに優しく抱き締められたままだった。
「テ、テオドール様、そろそろ……。」
そう言って離れようと動くクラウディアをテオドールはグイっと引き寄せ、先程より強い力で抱き締められた。
「ひゃ!」
「……ディア、もう少しだけ。」
耳元でテオドールの甘く掠れた声が響き、クラウディアの顔は更に熱を持った。
「うぅ……テオドールさま……。」
テオドールは狡い。
昨日までそんな素振りは一切無かったのに、急にこんなに甘くなるなんて。
クラウディアと呼んでいたかと思えば、ここぞと言う時だけ「ディア」と呼ぶなんて。
クラウディアはそんな気持ちを込めてテオドールを睨んだが、間近にあるその大好きな人の顔は蕩けそうな程、甘く微笑んでいてクラウディアは何も言えなくなってしまう。
「クラウディア、明日の執務の時間が終わったらどこかに行かないか。」
「それって、デ、デートですか……?」
レジナルドと婚約者だった頃、クラウディアは執務に追われ出掛ける暇など無く、またレジナルドと良い関係では無かったことからクラウディアはデートと言うものをしたことが無かった。自分でデートと言葉にしておきながら、クラウディアは胸の内がむず痒くなる。
「身構え無くて良い、クラウディアが行きたい所へ出掛けるんだと思ってくれないか?」
どこに行きたい?と尋ねられ、クラウディアは遠慮がちにずっと行きたかった場所を挙げた。
それを聞いたテオドールは少し驚いた後、頷いてクラウディアの頭を撫でた。クラウディアはホッと息を吐き、テオドールの胸の中で漸く笑顔を見せた。
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