第22話
「クラウディア嬢……君は思った以上に頑固なのだな。」
テオドールの呆れた声にクラウディアは怯むことは無く、自分の意見を曲げなかった。
「テオドール様だけ、お父様のところへ行かせるなんて絶対に駄目です!」
クラウディアは目をキリリと吊り上げているが、それすら猫のようで可愛らしく、サムもジョアンナもほっこりしていた。そして、それは恐らくテオドールも同じだった。
「……っ、クラウディア嬢、頼むからここで待っていてくれ。」
「駄目です。」
クラウディアは譲らなかった。
クラウディアが父親を置いて部屋を飛び出した後、ジョアンナが父親を追い返したようだ。テオドールは、クラウディアが心配している他の婚約者の有無を確認するためにも、クラウディアがテオドールの屋敷に住み続けることを伝えるためにも、一度話をしに行くと言った。王族らしいことは何もしていないが、それでも王兄であるテオドールには無礼な真似はしないだろうという計算の上だ。
だが、クラウディアは大好きなテオドールにそんな迷惑を掛けることは嫌だったのだ。
「テオドール様。女性にお願い事をするのなら、相手のお願い事を聞くべきかと。」
ジョアンナが素知らぬ顔をして提案した。
「そうですね!クラウディア様、テオドール様にしてほしいことは無いですか?いくつでも良いですよ!」
「テオドール様にしてほしいこと……。だ、だめです!こんなに迷惑を掛けているのに、その上お願い事なんて!」
クラウディアは慌てて首を振ったが、その前に一瞬期待で頬を染めたことにクラウディア以外の全員が気付いていた。
「クラウディア嬢。迷惑なんて掛けられていない。むしろ、クラウディア嬢が来て、助けられている。してほしいことがあれば、言ってくれ。」
「で、ですが……。」
「バーネット公爵の所へ行くことも、俺がそうしたいから行くだけだ。遠慮なく教えてほしい。」
無欲なクラウディアの望みを聞ける、貴重な機会に、テオドールは食い下がった。そんなテオドールを見て、クラウディアは胸が苦しくなる。
「……ディアと。」
「ん?」
「ディアと呼んでいただけないでしょうか。」
クラウディアは首まで真っ赤に染め、小声で呟いた。次は、テオドールが胸が苦しくなる番だった。
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