第19話
「かっっっっっこよかったぁぁぁ……。」
就寝前の一人の時間、つい今日のテオドールとのことを思い出し、声に出してしまう。クラウディアはつい辺りをキョロキョロ見渡し、独り言を呟いてしまったことに恥ずかしくなる。
(だってテオドール様があんまりカッコよくて……!)
一人で言い訳するように心で呟く。畑の作業中、クラウディアの髪についた土を祓う為、一瞬だけ触れられたテオドールの太く男らしい指をつい何度も反芻しては顔を赤くしてしまう。
(それに、それに、工房の中では……!)
畑作業の後、工房では初めて木箱作りをさせてもらった。クラウディアの覚束無い手で、工具を持たれることがテオドールはひどく不安だったようで、終始クラウディアの周りをウロウロしていた。その様子が何だか動物のように思えて、可愛く感じていた。テオドールの過保護な見守りのおかげで、クラウディアは怪我することなく、今日の工程を終えた。
(こんなにも幸せでいいのかしら?)
ほんの少し前までは、毎日公務に忙殺され、時折レジナルドに詰られるだけの生活だった。たった一人の家族である父親は、上昇思考が強い為、王宮で酷い目に遭っているクラウディアに温かい言葉を掛けようとも、助けようともしてくれなかった。
それが今は、毎日ゆったりと時間を過ごすことができ、新しく興味を持った畑仕事と木箱作りをさせてもらっている。使用人たちは親切でクラウディアを大切にしてくれている。
そして何より、大好きなテオドールと一緒に住むことができ、最近では毎食、一緒に食事している。婚約者としての関わりは皆無だが、それでもテオドールはクラウディアを大切にしてくれている。
(テオドール様と、もっとお近づきになりたい。)
神に祈るようにして、クラウディアは心の中で強く呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます