第7話

 翌朝もクラウディアは気持ちが落ち込んだままだった。


 ほとんど眠ることが出来ずに朝食の席に着くと、テオドールはいなかった。サムもジョアンナも、テオドールはいつも朝が早いからいないだけだと、フォローしてくれていたが、あの焦りようを見る限り、クラウディアを避けているに違いない。




(テオドール様は、ご厚意で私を助けようとして下さったのに……避けられるのも無理ないわね。)




 レジナルドの婚約者だった昨日までは、あんなにも忙しかったのに、今は何もする事はなく手持ち無沙汰だ。クラウディアは、与えられた部屋でぼんやりと過ごしていた。





◇◇◇◇




 暫くするとジョアンナがやって来て、切り出しにくそうに口を開いた。




「クラウディア様……昨日テオドール様にお話されたアネット様とのことは、私とサムも教えていただきました。」





「そうだったの……テオドール様には本当に申し訳ないことをしてしまって……貴女達も良い気分はしないわよね。ごめんなさい。」




 目を伏せて謝罪するクラウディアに、ジョアンナは慌てて首を振った。




「ち、違います!クラウディア様。私もサムも、クラウディア様に来ていただいて、とても嬉しいのです。勿論、他の使用人たちもとても喜んでいます。聞いていることをお伝えしたのは、アネット様とのことを私たちが知っていると分かれば、相談しやすいこともあるかと思ったからです。」




「ジョアンナ……ありがとう。嬉しいわ。」




 クラウディアは、昨夜から引っかかっていたことを恐る恐る訊ねた。




「……テオドール様は、お慕いしている方がおられるのかしら?」




 もしいるとしたら、クラウディアは、取り返しのつかないことをしてしまったのではないか、昨夜から気になって仕方なかった。




「まさか!いないですよ!……テオドール様は、あの歳で、今まで女性との交遊もなかったので、戸惑っておられるだけですよ。ほんと、我が主ながら意気地なしだと思いますよ。」




「まぁ!」



 思わずくすくすと笑い出すクラウディアを見て、ジョアンナは漸く安心した。この可愛らしい人を、絶対にテオドールの妻にするのだと、一人決心した。






 コンコン。



 ノックの音の後、メイドの一人が入ってきた。




「お話し中、申し訳ありません。クラウディア様に、王宮からお客様がお見えなのですが……。」




 メイドの緊張した面持ちを見て、クラウディアとジョアンナは顔を見合わせた。

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