97話 ルミリエの想い
今日は俺とディヴァリア、サクラ、ミナとシルクとルミリエで集まっている。
このメンバーで集まるのも久しぶりな気がするな。前はサクラを除いた5人で集まったんだったか。
まあ、毎回同じ人間で集まるよりも、しっかり関係ができている証だと思える。
誰かが居なくては成立しないという関係ではないというか。潤滑油が必要な歪んだ関係ではないというか。
それにしても、だいたい俺の家に集まるよな。まあ、父さんも母さんも歓迎してくれているので、問題はないが。
みんなと一緒にいられる時間が学園以外にもあるのだから、嬉しいだけだよな。
「リオンちゃんは大変だったよね。最近まで続いた事件、みんな犯人が友達だったんでしょ?」
まあ、確かに。初めはマリオ、次いでエギル。最後にキュアン。全員仲良くしていた。
とはいえ、今ではもう、どうでもいい相手でしかない。俺にとって大切な人は、ここにいる人達、使用人達、エルザさんとエリス、父さん母さん、師匠達。これだけだ。
もう、これ以上大事な人を増やす訳にはいかないだろう。今ですら限界を感じているんだ。
だから、安易に誰かを線の内側に入れれば、また助けられないという事になるだけだろう。
いいかげん、見捨てることを覚えるべきなのだろうな。目の前で困っている人が居たとしても。ユリアやフェミルのような相手が居たとしても。
新しい出会いの可能性が無くなることは悲しいが、今大切に感じている人を失うよりマシだ。
本当に仲良くできるかどうか分からない相手より、いま仲がいい相手を大事にするべきに決まっている。
「そうかもな。でも、お前達のおかげで大丈夫なんだ。みんなには感謝しているよ」
「私達の方がもっと大切だってことだよね。嬉しいよ、リオン」
「同感です。リオン君に大事に思われていることは、とても心を暖かくしてくれる」
「わたくしも同じです。リオンのおかげで王になれた。それよりも、リオンがわたくしを求めてくれることが嬉しい」
「うんうん。リオンちゃんが私達を必要としてくれること、間違いなく私達の力になっているよ」
「そうね。あたし達みんな、リオンに大切にされているものね」
俺がみんなを喜ばせられているのだと思うと、とても嬉しい。
やはり、大切な相手が幸せであること以上の幸福なんて、そうそうないよな。
みんなが俺を求めてくれているという事実も、大事なことだ。
親しい人から必要とされなくなるなんて、つらいどころの話ではないだろうからな。
「ありがとう。お前達の友達でいられて、嬉しいよ」
「私達だって、リオンの友達なのは嬉しいよ。だから、お互い様だね」
ディヴァリアの言葉は、とてもありがたいものだ。
みんなと友達で居ることは、俺にとって得難い財産だからな。
ディヴァリア達も同じように考えてくれているというだけで、笑顔になってしまいそうだ。
やはり、みんなと出会えて良かった。それだけは、きっと何があっても変わらないはず。
「ならきっと、俺達は最高の関係だな。お互いがお互いを喜ばせられるのだから」
「そうね。あたし達なら、きっとどんなことだって乗り越えられるわ。だから、リオン。絶対にあたし達から離れたりしないで」
「そうだよ。リオンが居なくちゃ、私達は始まらないんだからね。リオンが作った関係なんだから」
「同意します。私達を繋げてくれたのは、リオン君ですから。そして、みんなリオン君に救われた」
「そうですね。わたくしが王になる道が生まれたのも、シルクが大司教になれるのも、ルミリエが歌姫になれたのも、すべてリオンのおかげですから」
「うんうん。みんなのために全力で頑張るリオンちゃんが居てこそだよね。私達みんな、リオンちゃんが居たから、今が幸せなんだよ」
ルミリエの言葉は、俺のこれまでの苦労が報われる気がするほどのものだ。
マリオ達3人と決別した悲しみなんて、今こいつらと一緒に居られる喜びと比べたら、
俺達の過ごしてきた時間は最高だったし、きっとこれからも同じだ。
だから、いま大切と感じている相手を何より優先するという考えは、間違っていないはず。
「ありがとう。お前達が幸せであるという事実が、何よりも嬉しいよ」
「ふふっ。リオンは私達のことが本当に大切なんだね。いいな、こういうの」
ディヴァリアはとてもうれしそうに微笑んでいる。そうだな。もっと幸せを教えてやれば、失うことが怖くなるかもしれない。
そうすれば、誰かが傷つく可能性のある戦争なんて、避けようとするはずだ。
結局、ディヴァリアだって人間なんだ。化け物じゃない。だから、人の情で縛るのが一番いいはずなんだ。
「あたしだって、みんなのことが本当に大切なのよ。みんなだってきっと同じよね?」
「そうだね。私だって、みんなのことが大好きだよ。ずっと一緒に居たいな」
ディヴァリアがみんなのことを大好きだという事実が、本当にありがたい。人の心を持たない化け物ではないという証明に思えるから。
結局のところ、化け物相手に俺ができることなんて、何ひとつとして無い。
俺はディヴァリアと一緒に生きていたい。死んでほしくない。
だから、ディヴァリアの心をつなぎとめる何かがほしい。本格的に暴走しないような、強い鎖が。
今でも戦争を起こしているだろうと言われれば、言葉に困るが。
それでも、まだ致命的なラインではないはず。世界の敵というほどではないから。
今のところは、国としての策略の範囲に収まっているはずだから。
俺はディヴァリアの悪事を皆に知らせたいわけではない。
平和であるに越したことはないと思ってはいるが、だからといって大切な相手の幸福よりも優先するほどではないからな。
ミナもシルクもルミリエも、サクラやノエルも、みんなディヴァリアを大切に思っているのだから。
そんなみんなを悲しませたくはない。そう考えることは罪なのだろうけれど。犠牲になった人のことを思えば。
「そうだな。ずっと一緒に居たいものだ。みんなと過ごしている時間は幸せだからな」
「同感です。私達を結びつけてくれたリオン君には、とても感謝しているんです」
「わたくし達の友情は、リオンが繋いでくれたものですからね。わたくし達のために、物語以上に力を尽くしてくれたリオンが」
「うんうん。このキラキラした時間は、リオンちゃんが居るからこそなんだよ」
「あたしなんか、リオンに全員紹介してもらったものね」
俺はみんなが仲良くできそうだから一緒になるようにしただけだ。大したことはしていない。
それよりも、みんなに本当に俺はふさわしいのか心配だ。大切に考えてくれていることは分かる。
だとしても、俺はみんなより1段落ちる存在だからな。まあ、本人達には言えないが。
「みんなが仲良くしてくれているのなら、最高だよ。みんな、俺にとって大切な人達だからな」
「リオンちゃんのおかげだよ。私を歌姫にするために、ディヴァリアちゃんたちの協力を仰いでくれたリオンちゃんの。私の歌が大好きだって言ってくれたリオンちゃんの」
「そうだね。リオンがルミリエの歌を聞かせてくれたから、広めようって思ったんだからね」
「わたくし達も、ルミリエの歌は大好きです。ですが、リオンが一番好きなのでしょう」
「同意します。リオン君の熱意があったからこそ、私達はルミリエさんの歌を大好きになれた」
なら、俺が頑張ってよかったよな。ルミリエほどの素晴らしい歌なんて、他に歌えるやつは居ないんだから。
俺たちがルミリエの歌をいつでも聞けるという幸せは、最高ですら軽い言葉になるほどなんだから。
「ねえ、リオンちゃん。私はリオンちゃんのためなら、どんな歌だって歌ってみせるからね。だから、ずっと聞いていてね」
――――――
ミナが王様になると決まったことで、私達はパレードを行うことになった。
そのための準備として、みんなで色々と動いているんだよね。
リオンにも参加してもらうつもりではあるけれど、秘密の話もあるから。
まだ、リオンには伝えなくてもいいかな。
今は、ルミリエがパレードで歌うための準備をしている。
ミナをたたえる歌を、準備してもらったんだ。私としては、リオンを持ち上げる歌も作ってほしいかな。
そこで、ルミリエに相談しているところ。
――歌の力は本当にすごいよ。言葉だけでは届かない相手にまで届くんだから。
リオンの言葉はきっと本当。ルミリエの人気を考えたら、ただの言葉ではありえない領域だから。
そんなルミリエの力があれば、きっと私とリオンの結婚には近づいてくれるよね。
でも、1つだけ問題があった。ルミリエの心だ。私はルミリエを傷つけてまで、結婚に近づきたいわけじゃなかったからね。
どうせ、時間が解決してくれる問題なんだから。少し待つくらい、ルミリエのためなら、なんてことないよ。
「ねえ、ルミリエ。リオンの名声を高めるための歌も作ってほしいな」
「もちろんいいよ! リオンちゃんの活躍は、もっと語り継がれるべきだもんね!」
「ありがとう、ルミリエ。でも、ルミリエは大丈夫?」
「いったい何が? リオンちゃんを褒めるなんて、当たり前だよ!」
「そんなに好きなのに、私を応援してくれているのはってこと」
「気にしなくていいよ! リオンちゃんの幸せが、一番大事なんだからね。だから、リオンちゃんを泣かせたら許さないよ?」
「うん、もちろん。リオンは絶対に幸せにするよ」
「そんなディヴァリアちゃんだから、リオンちゃんを任せられるんだ。だから、大丈夫」
「ありがとう。大好きだよ、ルミリエ」
「うん、私も。ねえ、いつか私に、2人の子どもを抱かせてほしいな」
「それは嬉しいな。楽しみにしてるね」
ああ、本当に楽しみだ。ルミリエが私達の子どもを抱いて、子守唄を歌ってくれる。絶対に幸せに決まっているからね。
だから、リオン。どんな障害を乗り越えてでも、一緒になろうね。
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