第37話 美少女エイリアンVS蜘蛛系エイリアン

「三カ所に狙撃チームを配置しています。報告があれば、即座に敵を排除できる準備が私たちにはありま――」

 そこで視界の端に黄色い光がちらついた。博物館に隣接する森林エリアだ。この博物館は植物の展示もしているらしいけど、その木々の間に青白い肌の人間がふらふらと出てきた。

 私は即座に口を開いた。


「敵発見! 正面、左!」

 ブシャ!

『よっしゃ! ヘッドショット! ねぇ、早いでしょ』


 確かに早い。報告から一秒以内で倒してるし。

 私はクレアに「グッドキル」と返しつつ血と脳漿をぶちまけて倒れた歩兵級から視線をそらし、警官隊を見て得意げに目を細めた。


「こんな感じにするの。簡単でしょう?」

「おぉ……すげぇ……」

「なんて精密かつ迅速な狙撃だ……」

「吸いつかれるように頭に入ったぞ、アレ……どうなってるんだ……?」


 警官たちの驚きの声を背に受け、私は正面入り口に歩み寄る。

 そこで断続的は射撃が加えられていた。正面に展開した突入チームが正確に歩兵級の頭部を撃ち抜く中、部下の一人が振り向いた。


「クレーメア1、正面からステージ1の歩兵級が散発的に出てきています」

「了解……ステージ3以上は――」


 視界の端で熱探知が反応し、森の一部を白く染めた。


「――森林エリアと博物館の中ね。よし、外はクレーメア2たちに任せて私たちは突入するわ」


 私はそう言うと、博物館の出入り口すべてに配置したチームに、。


「突入チーム、突入開始」


 と告げた。その次の瞬間、二カ所からほぼ同時に爆発音が響いた。

 防犯シャッターを爆弾で吹き飛ばした音だ。そして私たちも突入する。正面入り口はプラズマで溶かされて穴が開いてるからそこから入った。

 私たちはまず、受付ホール周辺にいたステージ1の歩兵級を掃討すると、プラズマの射撃を警戒して通路に銃口を向けた。

 すると案の定、正面通路から灼熱の雨が降り注いだ。


「散開して応戦!」


 私は叫び、チームを左右に分散させた。

 目の前に淡い光がちらつき、衝撃が空気を揺らす。

 装甲服のエネルギーシールドで拡散した光だ。このまま直撃し続ければ過負荷になってシールドがダウンしてしまう。強化されたNOXの動体視力でもこれほどの弾幕を避けるのは不可能だけど、問題ない。シールドが切れるより先に奴らを倒せばいいだけよ。プラズマを浴びながら私は持っていたプラズマ機関銃を歩兵級に向けて引き金を引く。

 銃口からプラズマが発射された直後、歩兵級ステージ3の爬虫類にも似た醜悪な顔に何発も着弾し、キチン質の肌を焼いた。部下の隊員たちも高速徹甲弾やプラズマ弾を撃って次々と制圧していく。

 そして十秒ほど撃ち合うと、最後に残っていた歩兵級が私のプラズマ弾を受けて倒れた。

 しかし――


「グガァァァァァァァァ! グギャァァァァァァァァ!」

「奥から拡散級キャリアー多数! くそっ、今さら出てきやがって……!」


 部下の一人が忌々しげに叫ぶと、数十匹の大蜘蛛が押し寄せてきた。

 拡散級。ネコ科の頭蓋骨の頭部に蜘蛛の身体をもつ昆虫タイプのVICSだ。

 私たちは掃射し、奴らの進行を食い止めようとしたけど、なにしろ数が多い。それに走る速度も人よりずっと早い。接近されるのは必然だった。

 ガッと大口を開けて拡散級が飛びついてくる。


「ふッ!」


 鋭い足蹴りで吹っ飛ばし、私はプラズマ機関銃を構えた。蹴られた衝撃でバウンドする大蜘蛛に容赦なくプラズマ弾を叩き込む。それと入れ替わるように別の拡散級が飛びついてくる。


 ――しつこいわね……ッ!


 ほとんど格闘戦のような距離で銃を撃ち、拡散級に組み付かれないように動きながら部下たちとともに応戦する。

 銃弾を受けて蛍光色の血を噴き出し、拡散級は次々と動かなくなっていく。数は多いけど、装甲服があれば大した敵じゃない。素早く動き、射撃を加えているうちにやがて動いてる拡散級はいなくなっていた。

 プラズマに焼かれた煙と硝煙が立ち込める受付ホール。別チームが突入してるからどの通路からも断続的に銃声が反響しているけど、この調子ならじきにこの博物館は制圧できる。

 ただこの先は少々入り組んでいて展示物が死角を作っていた。私は視界端に映るミニマップをちらっと確認すると、口を開いた。


「この先は展示エリアが点在しているわ。部隊を二手に分けて前進し、挟み込むようにクリアリングして」

「了解。左の通路から進むぞ、クレーメア4から8、俺に続け。残りは隊長に引っついてな」


 黒いアーマーが手を振り、クレーメア3――フェンリー大尉のチームが左の通路に進む。彼ら六人の部下が進むのと反対側を私たちは注意深く入っていく。鹿や熊の剥製が展示されたエリアに足を踏み入れる。


(次回に続く)

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