第10話 謎の犯罪組織との意外な関係

 俺は苦笑して、たどたどしくお断りの言葉を口にする。


「うーん、その、悪いけど、俺は、いらないかなぁ……?」


「何故です?」


 すかさず、桜庭が顔を近付けてきた。


 だから、顔近いってっ!


 お前のPeasonal対人 space距離、どうなってんの?


 桜庭から体を引くと、桔梗に体を押し付ける形になってしまう。


 右も全裸、左も全裸。


 ぅう……どっちにもいけねぇ……。


 泣きそうになりながら、早口でまくし立てる。


「俺、寒がりじゃねぇし、むしろ暑がりだし、今までだってひとりで寝てたし、出来ればこれからだってひとりで寝たいし、そういうなんか、こう、良く分からないサービスいらねぇからっ!」


「そ、そんなっ! ご主人様が、おひとりでお休みになられている時に、何かあったらどうなさるおつもりですかっ?」


 顔を蒼褪あおざめさせる桜庭に、俺は言い返す。


「何かって、何だよっ? 何も起こらねぇし、どうもしねぇよっ!」


「ご主人様の寝込みを襲う者が、いるかもしれません」


 桜庭が、ガバッと俺に抱き着いて来た。


 うん、今、現在進行形でお前に襲われてるよね、絵的に。


 当たってる当たってる。


 当たっちゃいけないものが、俺の足に当たってる。


 もしかして、当ててんの?


 止めて! 俺、そういう趣味ないからっ!


 ホモは、マジで勘弁かんべんしてくれっ!


 力ずくで、桜庭を引きがして、動揺どうようでやや裏返った声で言い聞かせる。


「あのなっ! 俺なんか、誰も襲わないに決まってんだろっ? もし襲われるとしても、体じゃなくて、命の心配しろよっ!」


「命を狙われるようなことが、あるんですかっ?」


 ますます心配そうな顔になる桜庭に、俺はしまったと思った。


 あ~……これ、言っちゃマズイのかなぁ。


 まぁ、危険になってから言うのも何だし、先に言っちゃうか。


「これは、俺の考えすぎかもしんねぇんだけどさ。もしかしたら俺、『Greatグレート Oldオールド Onesワン』に命狙われるかもしんねぇの」


Greatグレート Oldオールド Onesワン……ッ!」


 その言葉を聞くや、桜庭の顔が「劇的ビフォー・アフター」くらい変化した。


 恐ろしい鬼神のような、怒りの表情になった。 


 あまりの変化に、俺はビクッと体をこわばらせる。


 あれ? もしかして、地雷踏んだ?


「え? ど、どうしちゃったの? 桜庭……」


「僕の両親は、『Greatグレート Oldオールド Onesワン』に殺されたんです……」


 地の底から響いてくるような低い声で、桜庭は衝撃の事実を口にした。


 橘と桔梗も驚いているから、コイツらも知らなかったのだろう。


「『Greatグレート Oldオールド Onesワン』に……?」


「ええ、僕が四歳の時に、家ごと奪われました。血だまりの中に倒れていた両親の死体と、焼け落ちていく家……その日のことは、片時かたときも(ほんのわずかな時間も)忘れたことはありません」


「そんな……」


「当時四歳だった僕は、『Greatグレート Oldオールド Onesワン』の存在など、知りようがありませんでした」


「まぁ、四歳じゃあな」


「ですが、どうしても両親を殺した犯人を知りたくて、探偵に調査を依頼したところ、『Greatグレート Oldオールド Onesワン』が両親を殺したことが判明したのです」


「そうだったのか」


「そんな僕を、不憫ふびんに思ったミッチェル様が、引き取って育ってて下さいました。少しでもご恩返おんがえしをしようと、執事の資格を取り、今までお仕えして参りました」


 なんて声を掛けて良いか分からなくて、黙り込む。


 俺も幼少期に、両親を亡くしている。


 そういえば、なんで死んだかは詳しくは知らない。


 もしかしたら、俺の両親の死も、『Greatグレート Oldオールド Onesワン』と、関わりがあるかもしれない。


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