第4話 白亜の豪邸

「ここです」


「ほ、ホワイトハウス?」


「いえ、ミッチェル氏が、生前住んでいた屋敷です」


「う、ウッソだろぉおおおおぉぉぉ~っ?」


 目の前にあるのは、ホワイトハウス並の豪邸だった。


 ホワイトハウスってのは、アメリカの首都ワシントン市にあるアメリカ大統領の官邸かんていのこと。


 とにかく、白くてデカい。


 ホワイトハウスの床面積は、約五千百 m2。


 階数は地上三階、地下三階の計六階。


 部屋数は驚きの一三四室。


 エレベーターは、三基備さんきそなえているという。


 こ、この豪邸はそこまででは……ないよね?


 個人の所有物で、あそこまでデカくはないはずだ。


 柵に囲まれた門の前には、ムキムキマッチョマンな門番まで立っているし。


 ここは、いったいどこだ?


 もう、ここにいるだけで、別世界だ。


 加藤先生が門番に話し掛けると、門が開かれた。


 門番がにこりと、俺に微笑み掛ける。


「どうぞ、お入り下さいませ、ご主人様」


「あ、ども。まだ、ご主人様じゃないんですけど……」


 ぎこちなく微笑み返して、屋敷へと向かう。


 ってか、門から玄関までが超遠いんだけどっ!


 何mあんの? これ。


 と、思ってたら、目の前に長くて四角い超高級車が停車する。


 大統領とか|Very Important Person《最重要人物》しか乗れないような、ロールスロイスとかいうヤツ。


 こんな超高級車、テレビでしか見たことないぞ。


 運転席から紳士服に身を包んだ運転手が降りて来て、後部座席のドアを開けてくれる。


「お待たせ致しました。玄関まで、お送りさせて頂きます」


「え? 玄関まで、車が必要な距離なんですか?」


「ええ。さ、乗って下さい」


 運転手と加藤先生にうながされて、恐ろしく広い高級車に乗せられた。


 シートは革張りでフッカフカだし、乗り心地はめちゃくちゃ良い。


 だが俺は、もうガッチガチに緊張して、どうして良いか分からなくなる。


 こんな超高級車に乗れる日が来るなんて、思わなかったぞ。


 それから五分ほどして、車は止まった。


 自分でドアを開けようとしたところ、運転手が回り込んで開けてくれる。


「ドアを開けるのも、私の仕事ですから」


「そ、そっすか……」


「ご乗車、ありがとうございました。どうぞ、お気を付けてお降り下さいませ」


 にっこりと運転手に笑い掛けられて、俺は何だか申し訳ない気持ちになった。


 玄関に立つと、重厚な木製の両開きの扉が立ちはだかっていた。


 手を掛けるまでもなく、扉がゆっくりと開かれる。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


「……は?」


 俺は、目の前の光景に|呆れて言葉が出なかった。


 玄関を開けると、それぞれ個性的なイケメンが五人並んで、うやうやしく出迎えてくれた。


 全裸で。


 なんで、全裸?


 ミッチェル氏は、そういう趣味の人だったのか?


 だから、生涯独身だったんだろ? そうに違いない! そうに決めたっ!


 きっと、クジで決めたってのもウソだ。


 俺が、ミッチェルの好みのタイプだったんだ。


 そんな理由で、選ばれたんだ。


 ありえない……なんで俺なんだ……。

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