ばかしあい

革ズィマ・君・佳昌

これからこれからの話

――第一幕――

一比喩

「そんなにマスクの下が気になるかい?」

一読者

「はい。」

一比喩

「私は、君の見ている私。それでは駄目なのかい?」

一読者

「私があなたを追っているのは、露わとなった貴方の姿をこの眼で捉えたいからなのです。」

(あら、大胆。今時、こんな風に本質を追い求める者はそうそういない。)


――第二幕――

一比喩

「ひょっとしたら、君の知る私はいないかも知れない。それでもいいのかい?」

一読者

「それでも、私は受け入れます。そうでなければ、次に進めません。いや、この場にこうして立ち続けることさえできません。」

二読者

「知らずに済ませてこのまま楽しく、或いはすぐに忘れてしまえばいいじゃないか。どうして拘る?」

一読者

「私は作者ですから。観客として表現を素通しすることはできません。」

二読者はおずおずと立ち去り、自分自身の素性がのっぺらぼうであったと鏡を見て知る。


――第三幕――

一読者

「正直に言えば、私は、貴方に対する責任を全うできると断言できません。」

一比喩

「私には自由がある。そして、出生の謎は伏せられている。ほら、マスクの下にしても比喩は比喩として或るだけなのさ。」

ぱーののっぺらぼう

「茶番だ。ふざけている。藪を突き回して露わとなったのは、僕の正体だけじゃないか。」

茶番劇の作者

「私はあなたのポルノでないし、あなたは私のポルノでない。激昂せよ。それでいいじゃないか。」

マスクが剥がされ、口角からは泡が飛び、積年の恨みつらみ艱難辛苦そして率直な想いが熱と痛みを引き起こした。そのとき、人々は大層に喜び泣いて次の時代について想った。


これからこれからの話。

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ばかしあい 革ズィマ・君・佳昌 @yomikakuL

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