第33話 体育祭の練習に
体育祭の練習が始まったこともあり、僕はあれから図書室に近づいていない。
前回の勉強の時は相沢さんが図書室に来なくなり、チナちゃんと過ごした。
今度は僕が気まずさを感じて、図書室を避けている。
どこで、僕らはすれ違ってしまったのかな?
「何を考えているのかしら?」
「あっ! ごめんね。練習中に」
「いいわよ。こうして、レン君と結ばれているんだもん」
そう言ったヒメさんの足と僕の足が結ばれていた。
「物理的に結ばれているだけだよ。それに僕はあまり運動神経が良い方ではないから、迷惑をかけたらごめんね」
「二人三脚はお互いの呼吸を合わせるのが大事なだけよ。運動神経は関係ないと思うわ」
「そうかな? それならいいけど」
「さぁ私の腰に腕を回してくれるかしら?」
「えっ? 肩を組むんじゃないの?」
「いいえ、腰の方がしっかりと体を密着できるわ。よろしくお願いするわね」
僕は言われるがままに、ヒメさんの腰に腕を回した。
細くてしっかりと引き締まった腰は力を入れると折れてしまいそうだ。
「あら、意外にレン君は着痩せするタイプみたいね」
「それって男子に言う言葉なのかな?」
「さぁ知らないわ。だけど、体に触れる意外に筋肉質だったから驚いてしまっただけよ」
そろそろ半年ぐらいは体を鍛えているので、成果は出ていると思う。
スケボーだけじゃなくて、筋トレも毎日欠かさずにやっている。
最初はついていけなかったマッチョ系new tubeのお笑い芸人さんのコアトレーニングも今では余裕でできるようになった。
不思議なものだよね。
半年前までは本ばかり読んでいて、自分が運動をするなんて考えたこともなかったのに。
「それに、こうやって抱かれていると分かるわ。男性の体って硬いのね」
「どこを見ているのかな?」
ヒメさんから視線を感じて僕が問い返す。
「いやだ。そんなことを女性に言わせるなんて、レン君は鬼畜なのね。筋よ」
「そんな変なところを見ていたの?」
僕は疑わしい目でヒメさんにジト目を向ける。
「いいえ、首の筋肉の筋を見ていただけよ」
「うん。わかっているよ。目線が首だったからね」
「ふふふ、何を期待していたのかな?」
「別に何も期待してません」
僕は深々とため息を吐いて、先ほどのやりとりを忘れるようにした。
「そ・れ・と・も」
ヒメさんが僕に近づいて、耳元で囁く。
「レン君は私に何かエッチなことを期待していたのかな?」
ボディータッチの頻度が増してきて、僕としてドキドキするのでやめて頂きたい。
「はいはい。ヒメさんは最初あった時とは随分と変わったね」
ここは話を誤魔化す以外に逃げ道を見出せない。
「そうかな? 変わった私は嫌い?」
「ううん。 前に戸惑っていたヒメさんは近寄り難いほど高嶺の花って感じだったけど。今のヒメさんは親しみがあって好きだよ」
僕はこれまで友人らしい友人がいなかった。
シュウトや相沢さん以外の、自分が変わろうとして初めてできた友人第1号だからね。明るくて親しみがある方が嬉しいや。
「そっか」
「うん? どうかした?」
「レン君は、私が好きなんだね」
「うん? そう言っているよね?」
「もう、今のはからかっているの」
「えっ? ああ、う〜ん。そっちはまだわからないや、ごめんね。だけど、わかろうと努力はしているんだ。シュウトにも好意に鈍感な態度はダメだって言われたしね」
シュウトが言ってくれた言葉や、ツバキ姉さんの教えを僕は大切にしたい。
人から向けられている好意を無碍にはしたくない。
「レン君はやっぱりいいね」
「えっ?」
「真っ直ぐだ! 普通はね。好きかどうかわからない女の子に迫られたら困るんだよ」
「そうなのかな? きっと僕に好きな人がいなくて、ヒメさんみたいな美人に迫られたら、嬉しいしかないと思うよ」
「美人ってもう、はいはい。私がからかうはずだったのにどうしてこうなるの」
相原さんとは確かに本の話をして楽しい日々だった。
だけど、ヒメさんから好意を告げられて、それでも友達として接してくれて、ヒメさんといる時間は気が楽っていうか、なんだか楽しい。
「ほらほら、練習するよ」
「はいはい」
「何? 私を面倒みたいに言って、怒るよ」
美人なヒメさんが頬を膨らませて拗ねたような顔を見せる。
「ごめんごめん。なんだか一緒にいるのっていいなって思えたから」
「えっ? あっうん」
うん? またからかってくると思ったけど、今度はヒメさんは顔を背けて口篭った。僕は何かしたかな?
「レン君って、なんだかズルいね」
「えっ?」
「私ばっかりだ。私ばっかりからかわれてる!」
あ〜そういうことか、ふふ。
ボクも色々な人と関わるようになって少しだけ余裕を持って話ができるようになったかな? ヒメさんは美人だけど、毎日見ていたら慣れてきたしね。
三日で飽きるではなく、慣れるが正しいと思う。
最初は綺麗すぎて、話をするたびに緊張していたから。
だけど、仲良く話をするようになって緊張しないで話ができるようになった。
「そんなことないよ。いつもありがとう」
「えっ? どうしたの?」
「ううん。なんでもない」
「あっ! からかおうとしている!」
「してないよ」
僕は誤魔化しながら、ヒメさんとジャレ合うように体育祭の練習を行った。
なんだか、これはこれで楽しいって思える。
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あとがき
どうも作者のイコです。
本日は他作品で宣伝をさせて頂き。
たくさんの方々に読んで頂いて嬉しく思います!!!
コメントにレビューを頂けて少しずつ返信できればと思っております(๑>◡<๑)
読んで頂き本当にありがとうございます!!!
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