第27話 彼女と僕
相原さんの姿を見送って、僕はしばらく立ち尽くしていた。
自分でも、二時間も彼女を見ていてキモいと思う。
だけど、凄く胸が苦しくて、切なくて、相原さんが愛おしいと思えてしまった
「ハァ、やっぱり僕は相原さんが好きだ」
彼女が悲しんでいる姿が辛い。
それを再確認して僕は家にたどり着いた。
家に帰ると、チナちゃんからメッセージが届いていた。
《先輩。今日はありがとうございました。また応援に来てくれるのを楽しみにしてます。先輩が見ていてくれると、絶対に活躍できると思います》
チナちゃんからのメッセージは僕を優しい気持ちにさせてくれる。
先ほど見た相原さんの彼氏に向ける怒りが洗い流されるほどではないけれど、それでも人に優しくありたいと思える。
「ただいま」
「お帰りなさい。どうだったの? ってなんだか酷い顔ね。デートはダメだったの?」
家に入ってリビングに入ると、ツバキ姉さんがお茶を飲んでいた。
ツバキ姉さんからの質問に、チナちゃんのデートは成功できたと思う。感謝の気持ちと、相原さんの彼氏に思う怒りの気持ちが相反して微妙な顔をしてしまった。
「そう。う〜ん、最初に言ったでしょ。恋愛は凄く難しいの。互いに気持ちがあって、その折り合いをつけて互いと自分の思いが重なり合わなければ別れは絶対にやってくる」
ツバキ姉さんの言ったことは正しいのかもしれない。
今のまま相原さんは彼氏と別れてしまうのか? 別れた相原さんにボクは告白をするのかな?
「ねぇ、レン」
「相原さんに気にしないでって言われたんだよね?」
「えっ? うん。言われたよ」
「なら、しばらくは放っておいてあげる方がいいと思うよ」
「なんで? 今こそ
ツバキ姉さんは立ち上がって冷蔵庫を開ける。
そこにはエクレアが入っていて、ツバキ姉さんがボクへ差し出す。
「あげる」
「なんでエクレア?」
「甘い物を食べなさい。甘い物は食べてると幸せになれるから」
「それは知ってるけど、食べるよ」
ツバキ姉さんと並んでエクレアを食べた。
「恋愛はね。自分から動くものだけど、時に待たなければいけない時があるの」
「待たなければいけない時?」
「そうよ。混乱している人に話しかけてもその人は自分の中で問題を整理するために頭を使っているから、こちらの話を聞く余裕はないの」
ボクはツバキ姉さんに言われるまで相原さんのことを考えているようで、自分のことを考えていたことに気付かされる。
彼女が別れるかもしれない。
彼女が傷つけられた。
彼女が別れたら付き合えるかもしれない。
僕が思って考えたことは、彼女のことを考えているようで、自分の都合ばかりだ。
彼女が別れたら、気持ちの整理をする時間がいる。
彼女が傷ついたなら、その傷を癒す時間がいる。
彼女が別れても、僕と付き合うかどうかはわからない。
それなのに勝手に怒って、勝手に相原さんのことを考えている風に装って。
「それが普通の考え方よ」
「えっ?」
「あなたは私が指摘して、反省しているかもしれない。だけど、その必要もないのよ」
「そうなのかな?」
「ええ、あなたは誰も傷つけていない」
傷つけていない。
「今日一緒に出かけたチナさんは、あなたの優しさに触れた。それは楽しい時間を過ごせて幸せだったと思うわ。そして、相原さんはあなたに声をかけられたけど、彼女の心にあなたはいない。彼女を傷つけ、これからの話し合いをするのは相原さんと彼氏の二人の話よ。あなたじゃない」
僕は
ただの傍観者でしかないんだ。
相原さんにとって、僕はただのモブで、相談をする相手としてすら見られていない。何を一人で盛り上がっていたんだろう。
彼氏をぶん殴ってやりたいと思う気持ちもあった。
だけど、それを相原さんが望んだか?
「少しは冷静になれたかしら?」
「うん。僕は傍観者なんだね」
「そうね。あなたは相原さんの物語に出てくる仲の良い友人。彼女の恋愛物語には登場すらしていないかもしれないわね」
ハッキリと言ってくれるからこそ、僕は自分が間違っていることに気づくことができた。
「ありがとう。ツバキ姉さん。頭に血がのぼって変なことを考えていたと思う。だけど、どうしたらいいのかな? 僕は相原さんに恋愛対象として見られていないってことだよね?」
「あなたはバカね」
「えっ?」
僕が諦めかけているとツバキ姉さんに頬をつねられる。
「いい? 相手は弱っているの。今すぐは確かに待つ必要があるけど、相手があなたに相談するときそれがチャンスよ」
「チャンス?」
「そうよ。弱った心。支えてくれる優しさ。そして、頼りになる男らしさ。それらを見せて彼女の心を落とすのよ。あなたが男で、彼女を手に入れたいということをアピールするチャンスなの」
さっきまでは傍観者で今度は狩人?
「タイミングと駆け引きよ。間違えればチャンスを逃すわ」
恋愛の駆け引き! どんどん高等技術になってきて、できる自信がなさすぎる。
「僕にできるかな?」
「できるか! じゃないわ。手に入れたいならやるのよ」
「うっ、うん」
ツバキ姉さんがいつも以上に力を入れて僕を説得してくれたから、気持ちを切り替えることができた。
これは相原さんの問題だけど、僕の気持ちの問題でもあるんだ。
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あとがき
どうも作者のイコです。
ブックマーク250
レビューが100
を超えました。
たくさんの方々に読んで頂き嬉しく思っております!!!
コメントも頂けて、好きな物を書いて評価される喜びを味わっております。
ただ、ストックが尽きてしまったので、本日の夕方で二話投稿は最後にします。
明日から一話投稿に切り替えます。
10万字までは投稿を続けるように頑張りますので、どうぞお付き合いください(๑>◡<๑)
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