第12話 スケボー後輩
new tubeを参考にして、筋トレを始めることにした。
いきなり激しい運動をしても、絶対続かない。
だから、軽めのストレッチや基礎的な筋トレを選んで、一日一時間と決めて、運動をすることにした。
冬休みに入るまでは、基礎的な運動を続けた。
冬休みに入って、学校がなくなってからは、相沢さんからの相談はメッセージだけになった。
彼氏ができた相沢さんと二人と外で会うのは、あまり良くないと思ったので学校以外では会っていない。
余った時間で、スケボーを初めてみた。
本を読みたい気持ちはあるけど、これもいつかは相沢さんと付き合うためだと自分に言い聞かせれば、頑張れる気がする。
これがやってみると意外に楽しかった。運動は苦手だと思っていたけど、体を動かすのは嫌いじゃないみたい。
冬休みに突入して、時間もできた。
寒い早朝、誰もいない時間を狙って、公園に設置されたスケートボードパークで練習をする。
最初は乗るのも全然上手くいかなくて、バランスを取ることから始めた。
たくさん転けて、なんとか乗れるようになって技をする。
寒いからか、時間が早いからか、早朝は貸切状態でたくさん練習ができる。
午後には、本を読みたいから今のうちにしっかりと体を動かす。
冬でも、体を動かしていると汗が流れてくる。
「ふぅ、いくつか
二ヶ月はずっとやっているからか、結構上手く出来るようになった。
そろそろ二月に入っているけど、相原さんと彼氏に大きな動きはない。
年末年始も、お互い忙しくて会えなかったそうだ。
来年こそは一緒に過ごすんだと意気込んでいた。
ただ、世の中はもうすぐバレンタイン。
きっとそれぐらいには相原さんから、
心のダメージは大きいけど、相沢さんが笑ってくれる方が嬉しい。
ボクは相原さんのことを考えるよりも、スケボーのことを考えている方が気分が晴れて楽しい。
結構才能があったのかな? 技ができるようになると楽しい。
「あっ、先輩」
そう言って朝早くから声をかけてきたのは、小柄な背格好をした小金井さん。
最初に、この公園であった時は暗い顔をしていた。
朝靄で寒い中、黙々と練習する小金井さんは小麦色に焼けた肌をした美少女だ。彼女の顔はフードで隠れていたが、その存在感は大きかった。
公園には、歩いているお年寄り以外にはいつも僕と彼女だけで、風でフードが揺れると現れる美少女。
小金井さんは恥ずかしいのか、またすぐに隠してしまう。
たまに目が合うと彼女は静かに立ち尽くして、まるで風景の一部のように見えた。その瞳はどこか遠くを見ているようで、何かを探しているようにも見えた。
でも、僕と目が合うとすぐに逸らしてしまうので、僕は気づかないふりをする。
この公園は様々な運動ができる器具が設置されているので、時間が経過していくと他のスポーツを練習している人も増えていく。
「おはよう。小金井さん。今日も練習?」
「はい。自主練です」
彼女の足元にはサッカーボールが転がっている。
「あっ、あの、今日もいいですか?」
「ケガしないようにね」
小金井さんは、僕のスケボーをしている姿を見て、スケボーに興味を持ったそうだ。僕にスケボーを借りて技にチャレンジする。
僕としては将来の後輩が怪我をしてほしくないので、気が気じゃない。
「えい!」
円の1/2横から見て円の半分に切り取ったハーフパイプに使って技をする小金井さん。一度目は成功したけど、二度目でバランスを崩してしまう。
僕は彼女が怪我をしないように補助するために彼女を抱き止めた。
「すっ、すいません」
「楽しくなってしちゃうのはわかるけど、いきなり無理しちゃダメだよ」
「はい!」
恥ずかしかったのか、顔を赤くして返事をする小金井さんを下ろして、僕は彼女の前でハーフパイプでジャンプするのを見せる。
最初は僕もできなかったけど、最近はミスをする回数が減っている。
「凄い!」
僕も初心者だけど、小金井さんよりは少しだけ僕の方が上手い。
「じっ、実は今度デッキ組んでもらうことになったんです」
スケボーは意外に部品が多い。
板(デッキ)にタイヤを付ける金具やワックスも必要になる。
僕も調べ始めてから、色々と知ることになって楽しいことではあるけど、今はネットで調べれば出てくるので小金井さんも楽しくなったのかな?
「それはよかったね。やっぱり自分にあったスケボーを買った方がいいと思うよ」
「はい! その時はまた色々と教えてください!」
「僕も初心者だから、一緒に頑張ろうね」
「よろしくお願いします!」
スポーツしている子って元気で可愛いよね。
「それでは!」
サッカーボールを蹴って走り出した小金井さん。
その動きは凄く洗礼されていて、スケボーよりもサッカーをやった方がいいのに、素人の僕でも思ってしまう。
「人それぞれだと思うけど、スケボーは危ないと思うよ」
「いいんです! 高校に入ったら、たくさん教えてくださいね。飛田先輩!」
僕はあまり人との交流を持ってこなかった。
部活も帰宅部なので、後輩をお世話することもない。
だから、小金井さんの先輩呼びは、ちょっと心にくるものがある。
「うん。気をつけて、高校で会ったら挨拶するね」
「はい! 絶対ですよ」
「小金井さんと、話ができるようになって嬉しいよ」
「わっ、私もです」
なぜか、嬉々とした態度を取られるのは悪い気はしない。
二月を越えれば、三年生になるから、なんとか三人目の友人が出来た。
ツバキ姉さんの課題はクリアできたぞ。
僕は、相原さんとまた同じクラスになれるかな?
彼女が彼氏と別れた時に、僕のチャンスがやってくる。
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