第42話 ありがとう

「…こうた、話が…ある」


「…聞きたくない。

別れてって言うつもりやろ?

俺、イヤ」


!!!

何でわかったんやろう?


「なんでわかったんやろうって今思ったやろ?

わかるって。

俺じゃない何かを見てるって感じる時がある。

俺はなんかと比べられてる。」


「…ごめんなさい。」


「謝る事じゃないって。

好きになろうとしてくれてたのもわかってる。でも無理やったんやろ?」


「…うん」


「だから俺から言わせてよ、俺と別れて。

俺も忙しくて、彼女作ってる場合じゃなかったし。

あ、でも最後に渡したいものがあるんやけど」


「うちも、渡したいものがある。

買っちゃったから貰ってくれる?

いらんかったら捨ててくれたらいい。」


「じゃ、最後それだけ交換しよ」


だめだ、最後までいい人すぎる。

なんでこの人じゃダメなんやろう。

自分が振るのに涙が止まらない。




いつも集合する駅で待ち合わせ。

いつも街に行くのに乗り換えする駅。

いつものベンチ。

時間遅いから人もいない。


こうたがやって来た。


「かおりん、目の周り赤いよ。泣いた?」

こうたにほっぺ触られながら言われる。


「本当にごめん。

こうたのこと好きやけど1番じゃない。

他に好きな人がいる。」


「うん、なんとなくわかってた。

俺の事考えてこんな目になるまで泣いてくれたんやろ?

それだけで俺、うれしいし、もういいよ。

謝らなくていい。

って、ほらまた泣いてるし」

こうたは袖でうちの涙を拭う。


「これ、あげる」

2人でハマってたゲーム。


「俺、思い出すから出来んし。

新作出る頃には大丈夫やと思うからそっち買う。

いらんかもやけど、引き取って。」


「うん、わかった。

うちは、バレンタインデー渡せてなかったから。

こうたチョコ嫌いやから…」


「開けていい?」


うなずく。

中身はジッポライター。


「ありがとう。めっちゃ嬉しい。大事に使う。

これがいい感じに仕上がる頃にはいい思い出になると思うから。

残せる物くれてありがとう」


泣きながら首を横に振る。


「かおりん、泣きすぎ。俺、めっちゃ悪いやつみたいやん」

何度も頭撫でられたり、涙拭いてくれたり。

ほんま優しい。


「こうたは悪くない。うちが全部悪い」


「最後に1回キスしていい?」


うなずくと優しくキスしてぎゅーって抱きしめられた。

「こうた、ありがとう」

声が震えてる。声出して泣きそうになる。


もう一回キス


「ずっとこうしてしまいそうやから、もう行くね。」

こうたは歩き出した。

一回だけ振り返って手を振った。


こうたが行った後もしばらくは立ち上がれなかった。









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