第17話 ミチトの憑依術。
トウテの共同墓地。
200年近く経過していて、ハラキータ達が日々清掃や修繕を行っているが経年劣化は避けられない。
「墓の像はボロボロか…直すかな」
ミチトはあっという間に直すと、認識阻害で気付かないセルースの子孫のハラキータが「き…奇跡だ!」と喜んでしまう。
「あ、まずいな。でも皆が綺麗になったからいいや。でもさアクィ」
「何ミチト?」
「俺こんなに格好良くないよ?」
「誰か作ったのかしら?シヤ君かしらね?シヤ君にはそう見えていたのよ」
ミチトの像は本人を見たコーラルたちには多少の違和感があった。
雄々しい顔、皆を導く貴い英雄の姿でミチトが不満がるのもわかる気がした。
ミチトが困り顔で自作した保護したばかりの、若い姿のシヤの像を見て「ええぇぇぇ…?シヤぁぁぁ…」と漏らすと、ヘマタイトが「いえ、像を作られたのはトゥモ・スティエットとロゼ・スティエット、ジェード・スティエットです」と説明をする。
ミチトは同じく像になっていた3人の息子を見て、「あの子達…バカじゃないの?」と漏らすと、アクィが「ふふふ、いいじゃない。自分の像も綺麗に直しなさい。手抜きしてもコーラル達が直すわよ」と言う。
「マジか」と諦めたミチトは盛られた像を直す。
せめて皆を導くような格好をやめて、皆と仲良く並んだ日を思い出せるポーズに変えて、周りにリナ、アクィ、ライブ、イブの像、その周りにメロを含めた子供達を作り直して並べてしまった。
そしてアクィ達は盛り盛りに盛られているが、ミチトは「コレだよこれ!」と盛り上がる。
「ミチト!!」
「あれ?だめ?」
「なんで私の胸を減らしたのよ!」
「現実じゃない?アクィの像を作ったのは誰だろう?きっとライブがサービスしておくかって言ったと思うよ?」
「少ないわよ!」
ここでコーラルが「いえ!アクィさん!戦いやすいスタイルです!素敵です!」と声をかけて、「コーラル!!喧嘩売ってんの!?」とアクィに怒鳴られる。
「コーラルってそこは似なかったのな」
「ヴァン君、それはセクハラですよ?」
冷静に「まあイブの血も入ってるから、相殺されてイブよりになったんだろうな」と分析するシャヘルの声に、アクィが「憎い!死んだ後でもイブの胸が憎い!!」とアクィが漏らす。
このやり取りに「あはは」と笑ったミチトは「ありがとう。楽しかったよ。終わる前に少しだけ許してくれないかな?」と言う。
ミチトは「アクィ、話を聞いたから憑依術を作ってみた。見てくれない?」と言って愛の証を握る。
「間違ってないけど、ラミィの術と違うわ」
「うん。宿るというより気配を纏わして…一瞬だけだからね…」
ミチトはそのまま「憑依術」と言ってから愛の証をコーラルに戻して、服をペトラのダボダボに着替えるとネックレスを外した。
元の姿に戻ったペトラは「ふぅ、すごい経験だった」と言いながらコーラルを見て、「とりあえず愛の証は見ないでやってくれ」と言った。
「ペトラさん?」
「一晩くらいだろうけどな、ミチトは愛の証に自身を少しの間纏わせたんだ。約200年ぶりの夫婦水入らずだから、邪魔すんなって奴だよ」
コーラルは悪い癖だが読心術を切るのが少し遅れた。
コーラルに見えたのは愛の証の光景。
「久しぶりアクィ。それにしても若い日の姿だし、懐かしいね」とアクィの前に現れて話しかけるのはミチトで、アクィは「ミチト!?」と驚く。
「愛の証に2人分の容量はないから、俺は少しだけ一緒に居たら消えるからそれまで一緒に居ようよ」
目を輝かせて「いいの!?」と喜ぶアクィにミチトは「勿論だろ」と返す。
散々コーラル達の前でアクィをからかっていたミチトの姿はなく、アクィも普段の年長者の顔ではなく女性のもので、アクィは「嬉しい!もう会えないと思ったのよ!」と言って飛びつく。
ミチトはアクィを抱きしめながら「俺だってそうだよ。また会えて嬉しいよアクィ」と言うと、アクィは「ミチト、約束を守ってくれてありがとう」と言ってミチトの胸に顔を埋めた。
「約束?」
「私より先に死んだら許さないって言った事よ」
ミチトは天に向かって人差し指を向けてクルクル回しながら、「ああ…負けそうだから絶命術を…」と言うと、怖い顔になったアクィが「は!?」と聞き返す。
「冗談だよ。頑張ったよ。もう俺は命の底が見えてるのに、アクィってば元気なんだもん。毎日術で体を治したり、死なないようにズルをしてたから久しぶりに会ったシアの膝を治してあげられなくてさ。しかもトゥモが一日中隙あらば万命共有を仕掛けてこようとするから大変だったよ」
「ふふ。嬉しい。でも私は50で憑依術を使ったからその時までの記憶なのよ」
「マジか、じゃあそこら辺からの話とかしながら過ごそうか?」
ミチトの提案に頬を染めたアクィが、「ええ、でもその前に」と言って唇を向けると、ミチトは「ああおいでよ」と言ってミチトはアクィを強く抱きしめると、アクィは貴い者ではなく1人の女性の顔でミチトを抱きしめ返してからキスをするそんな姿だった。
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