第2話 国外から見えた疑問。
剣術大会の優勝者はジャックスで騎士団員をしていた男のひ孫だった。
優勝者はかつてミチトに剣を貰い、ジャックス家に取り立てて貰った男のひ孫だった事もあり、自分も剣をもらえた事に喜んでいたが、コーラル達はそれどころではなく必死になってヒーヒー言いながらなんとか剣を作って渡した。
アクィの感想としては1番読心術が丁寧なのがペリドットで、ヘマタイトは伝心術が丁寧、コーラルは術で姿を変えるのが1番うまいが主観混じりでどうしても本人の好みが優先されてしまい、シャヘルが間に入る事でそれを抑えてくれていた。
「貴方達、まだまだね。ミチトなら1人でやるし、剣だってひと振り5分もかからないわよ」
アクィの言葉に、「…努力します」、「勉強になりました」、「…くそっ、真式に生まれなければよかった」、「疲れた」とそれぞれが漏らす中、ヴァンは「オルドス様は凄いや、きっと4人とも1人でコレをやれって話だよね?」と言い、4人は愕然としていた。
剣を授ける所を見て、スティエットの再来に沸く剣術家達は、明日の戦闘指南に参加を希望する。
ガットゥー当主からすると、最近では参加者が減少していたのでありがたいとコーラル達を食席に招いて感謝を告げる。
ここで上手いのはヴァンが世間知らずのふりをして会話を運び、ヘマタイトとコーラルは貴い者としてキチンと受け答えをしつつ、ペリドットはオッハーのスティエットとバレないように、シャヘルと諸国漫遊をしているスティエットだが、シャヘルに付き合うだけで世捨て人の本人は土地に興味を持たない変わり者という設定になっていた。
宿屋はかつてミチト達も泊まった部屋で、ペリドットが「ここがライブと泊まった部屋だな」と言うと、アクィが「ええ、ミチトはお義母様から何故自分の父がオオキーニ人だと明かされずに大人になったかを聞いて、その理由に激怒した。それをライブが一晩中慰めて癒したのよ」と言う。
やはり自身のルーツになった先祖の存在が気になるのか、それぞれが口々に知っている事を話す。
盛り上がる中、部屋分けになると何故かヴァンとコーラルが同室になり、残りの3人がもう一部屋を使う事になる。
これはガットゥー当主からふた部屋しか確保できなかった事を謝られたが、急の急で仕方のない事であった。
「はぁ!?私とヴァンなの?なんで?」
「こっちのベッドは3つです。だれかが大叔母様と同室になる必要があります」
コーラルはヴァンからシャヘルまでを見渡して、「ええぇぇぇ…、なら別荘に行くわ」と言ったが、アクィから「貴い者として最低の発言だわ」と言われると、何も言えなくなってしまう。
「俺はマ・イードに詳しくないからシャヘルから色々聞きたい」
「僕も可能な範囲でトゥーザーの仕事を知りたいのでシャヘルと同室がいいです」
シャヘルはコーラルを見て「ずっと2人旅をしているんだ、今更照れる事はないだろう?」と言い、ヴァンにも「ヴァンはコーラルと一緒でも問題無いだろう?」と確認する。
「まあ平気。コーラルも夜中に布団剥いだらかけ直してあげるよ」
「あのね?私は女でヴァンは男でしょ?もっと何かないの?」
ヴァンは「無いって、綺麗なコーラルが俺に何かなんてないだろ?だからないよ」と笑って片付けてしまうと、コーラルは真っ赤な顔で「綺麗…?」と言うだけ言って毒気を抜かれてしまった。
照れるコーラルに「ほら、明日もあるんだから寝るよ」と言って、「皆おやすみ」と続けながら部屋に連れて行ってしまうヴァンはもはや無敵の人だった。
コーラルとヴァンのいなくなった部屋では、ペリドットが「なあ、アイツらって付き合ってんのか?」と聞くと、ヘマタイトは「僕にはわかりかねます」と答えて、シャヘルは「ずっとあんな感じだ。元々は一式の転生術でコーラルは自身をイブと誤認して眠っていた時、ヴァンがイブの世話をして、ヴァンはその時の気持ちのままで、コーラルはコーラルに戻ったから少しおかしくなってるだけだ」と答えた。
ヘマタイトは黒のトゥーザーが見ていたマ・イードという国の暗部について質問をしたが、「盟約で言えない。代わりに知りうる限りで偶然を装って構わない話にはしてきたから、見かけたら対応して悪を駆逐できる」としか言われなかった。
ペリドットは「なあ、一応気になっていたんだが、オッハーに行った爺さんの時ですら、ドウコには遠縁のロスやレスが居たらしいんだが、今はどれだけいるんだ?」と聞くと、ヘマタイトは「…一応可能な限り調べましたが、戦闘力を持ち冒険者や兵士として生きる者はほとんど居ません。居ても自身が住む家の周りを守る者や術で地盤強化をしたり治水に励んだりする者ばかりです」と答えた。
「成る程な。だが不思議なんだが…俺だけがズレているのか?」
「何がですか?」
「爺さんの話ではメロの血筋は見たことが無かったらしいが、それはシャヘルを見れば理由は一目瞭然だ。サルバンはヘマタイトの爺さんだったオブシダンとあのコーラル、後はあの本を書いたグラスなんて奴らもいて、今も所在が掴めてる。勿論ドウコのロスとレスもだ。だがどうしてミントが居ない?リナの血筋は途絶えたのか?」
ペリドットの話に渋い顔をしたヘマタイトは、「僕も追いましたが足跡はタシア・スティエット、シア・スティエット、コード・スティエットの孫辺りから急に追えなくなりました」と答えると、シャヘルが「オルドスは全てを知っているが、ミントは皆可能な限りで力を隠して生きている。今も血脈は途絶えていない。トゥーザーは可能な限りミントを把握している」と答えた。
驚いた顔のヘマタイトが「陛下には?」と聞くと、「代替わりの挨拶の時に、申し訳程度に伝えてある」と返し、「ミントにスティエットはいるのですか?」と問われると、「…わからない」と返される。
「わからない?」
「黒のトゥーザーとして追っても、奴等は徹底して術と名のつくものを秘匿する。剣術、魔術、拳術の全てを隠して生きている」
「それじゃあ一般人か?」
「いや、あの剛腕、あの体躯で一般人は無理がある」
「その口振りなら知っているのですね?名前は?」
「盟約で言えない。だが関わりを持って目の前に現れたら教えよう」
「なんか面倒だな」と答えるペリドットに、「もう遅い」とシャヘルが言うと諦めてヘマタイト達は眠りについた。
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