死闘

市川は本拠地近くに止めてあった車に乗り込むと、すぐにエンジンを掛け車を走り出した、同じく獅子神も自分の愛車へと乗り込むとその場から逃げようと既に車を走らせていた、市川の運転する車は獅子神は未だそんなに離れた場所にはいないとはずだと判断し、周辺の道路を回りながら探っていた、「未だ遠くまで行ってないはずだ」市川は目を尖らせて辺りを見渡した、その頃眞鍋は、出血する血を手で抑えながら何とか走っていた、痛みに耐えながら眞鍋はじっと我慢し続け探し回った、「ハー、ハー、ハー、、」必死に走り続ける眞鍋の額には尋常じゃないほどの汗が流れていた、すると突然眞鍋の足が止まった、ふと横の車道を振り向いた瞬間、一台の車が眞鍋の横を通りすぎた、その車の運転席にはこちらに笑みを見せる獅子神の顔が窓の外からハッキリと見えた、その車が去っていった後すぐに眞鍋は運転している市川に電話をかけた、恐らく獅子神が通った車道は先に市川が通っていたに違いないと判断したのだ、電話はすぐに応答した、「俺だ、今獅子神が運転する車を見つけた、恐らく市川の方へと向かってきている」 「わかりました、すぐに足止めする準備に取りかかります。」

そう応えると眞鍋は電話を切り、又すぐに車の向かった先へと走り出した、しかし眞鍋は何故かまたすぐに立ち止まってしまった。





あれはいつだったか、結成当初の関武連合は長い抗争に手を引こうと、二つの組織は合体したことで活気に溢れていた、いつしか最大暴団組織までにのしあがれた原因は、「この俺だ!、ここで終わらす訳には、いかないんだよ!」獅子神は強くハンドルを握りしめるとアクセルを踏んだ、目付きを強め車の速度を上げだした、「ブーーン!」反対車線へと車は乗り込み前を走る車両を勢いよく追い抜いていった、その時市川は走っていた道路から一度引き返し、こちらに走ってくる獅子神の車を待っている、「ブーーン、ブーーン」どんどんと速度が上がってきた、獅子神は前のフロントガラスをじっと見つめ、息を呑んだ、すると獅子神の目線の先に反対車線を走る不自然に速度が遅い車が目にはいってきた、一瞬眉間にシワを寄せ困惑したが獅子神は止まることなく突っ走った、市川は前からもうスピードで走る車を見つけた、「あいつだ!」

市川はすぐにクラクションを鳴り続けた、しかし向かってくる車は速度を変えない、「止まれ~!」市川は叫んだ、等々こちらに向かう車両は目の前に迫ってきた、窓越しから獅子神の異様な目付きが見えた、その瞬間でかい衝突音が回りから響き渡たり、突撃された市川の車は衝撃によって横に何度も横転した、獅子神の車は前方部分が破損し衝突したあとすぐにブザーが鳴り始めた、「クッ、ククククク」獅子神は目を覚ましよろつきながらもドアを開けて外に出た、ふと口元から流れ込んでくる血に気がつくと獅子神は頭から血を流していることに気がついた、「チッ」獅子神は目線を細めながらゆっくりとブザーが鳴り続けている車の後部座席のドアを開けた、車内の中は段々と煙が上がってきている、少し咳をしながらも席に置いてあった銃を取り出した、「やっとこいつを使えるときが来るとは、待っていたよ」獅子神は笑みを浮かべ横転する市川の車へとゆっくりと歩いた、歩いている間に獅子神は銃に弾を込めた、すると横転する車内のドアから両足を引きずりながら出てくる市川の姿が現れた、市川は睨みつけながらこちらを向いた、獅子神は弾を込め終わると銃口を市川の方へと向けた、「お前、確かあのクソ野郎と一緒にいた刑事だな、今すぐぶっ殺してやる」

市川は何も応えることなくただ睨み続けながら、僅かの気力で獅子神の方へと進んだ、獅子神は不適な笑みで市川の頭に銃を突きつけた、「ヘヘヘヘヘヘヘヘ」獅子神が引き金を引こうとしたその瞬間、でかい銃声が鳴った。






白岩組事務所前では、黒の車両2台と大型トラック一台が突如として現れ事務所前の道路沿いに止まった、一台黒の車両の助手席に座り込んでいるの男は松岡だ、窓から見える二階の事務所を見上げると、松岡はのんびりと背中をゆっくり座席に倒すと、ポケットから煙草を取り出した、「おい、」そう言うと運転席にいる組員がライターを取り出して火をつけた、松岡は深く煙草を吸うと窓の外に向けて長く煙を吐いた、「兄貴、いつでも行けます!」同席する組員は覚悟を決めた目付きで松岡を見つめた、「少し待て、話しておかなければいけない奴がいた、携帯貸せ」そう言うと組員はすぐに携帯を手渡した。





市川は段々と意識を失いそうになるなか、薄く何とか見える目蓋の先には人影が一人こちらに歩いてくるのが見えた、しかしその数秒後市川は目蓋を閉じてしまい、倒れこんだ、「へへへへへへ、又邪魔しに来たのか警察の犬が!」獅子神の表情は不適な笑みを見せていながらも内心ではどんどんと怒りに満ち溢れてきた、睨み付ける先には拳銃を構えた眞鍋の姿があった、「悪いがもう時間がない、大人しくブタ箱に入って貰おうか」そう呟くと眞鍋は握っている拳銃のバーを卸した、獅子神は黙り込みじっと眞鍋を睨み付けるている、その目は死んだ魚の様に感情が無く不気味な目付きだった、拳銃を構えたままゆっくりと眞鍋は近付いてくと、獅子神は突然笑い出した、「へへへへへへ」又あの不気味な笑い声だ、眞鍋は警戒していると、突然、獅子神は銃を振り上げ眞鍋に向け発砲した、「バーン」弾は微かに眞鍋の頬へと通過した、「チッ、」眞鍋は慌ててブザーが響きわたる車の後ろへと隠れた、しかし、「バン、バン、バン」獅子神は容赦なく銃を撃ち続けた、眞鍋は窓ガラスから獅子神の様子を覗こうとするも、その前に弾が飛んできてしまう、「あのクソが!」眞鍋は車体の前方部分へと移動し体を隠した、「俺は、これまで出世の為ならどんな汚い手も使ってきた、今回もそうだ」そう言うと獅子神は車のエンジン部分に狙いを定めて撃ってきた、どんどんと弾が弾かれ穴が広がってきている、眞鍋は車体のドアに背中を倒すと一息吐いた、そしてその数秒後、眞鍋は意を決して外へと走り込んだ、獅子神はすぐに飛び出てきた眞鍋の体めがけて銃口を変えると、一気に弾を弾き出した、「ババババババババ」その瞬間同じくして眞鍋も獅子神に狙いを定め、体を投げ出しながら引き金を引いた、その場はでかい銃声音が響き渡り、戦争が起きたのかと思う程に周辺の者達は驚きを隠せずにいた。



眞鍋は地面に体を強く打ち付けると、その衝撃はとてもじゃなかった、「グゥワァーーー」よく見ると眞鍋の左足は獅子神によって放たれた弾が当たっていた、その痛さに眞鍋は立ち上がれなかった、一方獅子神は、「!」右足の太股部分を撃たれていた、「貴様ぁぁぁ!絶対に殺してやる」獅子神は倒れる眞鍋を睨み付け足を引きずりながらその根性で眞鍋の元へと歩いた、「ヴゥ、獅子神!」獅子神は痛みに叫びながらも、眞鍋の元へたどり着いた、「へへへへへ、ゆっくり痛みつけてやる」そう呟くと獅子神は手にする銃を眞鍋の頭に突きつけた、「カチ、」レバーをゆっくりと卸し獅子神はニヤリと笑った、「終わりだ。」






「もう死んだのか、俺は天国に行けたのか、それとも地獄に叩き落とされたかもしれないな、そうしたら俺はあいつと一緒に罪を背負っていこう。」

そう話していると遠くから物音が鳴っているのに気がついた、「カチカチ、カチカチ」その音はどんどんでかくなってくる、「!」突然眞鍋は何かに呼び出されたかのように目を覚ました、目線の先には銃のレバーを押し続ける獅子神の姿があった、その顔は随分と焦っている様子だった、「クソ、クソクソクソクソがぁぁぁ!」獅子神の銃は眞鍋を撃とうとしたその時には既に弾は残っていなかったのだ、やがて獅子神は眞鍋が目を覚ました事に気がつくと、慌てて殴り掛けようとしたのを眞鍋はギュッと脇で獅子神の腕をロックした、その隙に眞鍋は獅子神の撃たれた太股付近を握りしめた、「ギャァァァ!」獅子神は思わず叫び出し、鬼の形相で眞鍋を睨み付けた、「お前ぇぇ、俺達に歯向かったこと必ず後悔するぞ」 「そんなの俺には関係ない、俺はただ目の前にいる悪を叩き潰すだけだ」そして眞鍋は更に強く握りしめた、無我夢中で睨み付ける二人、獅子神は何とか腕を抜こうとするが、痛みに耐えきれず睨み付けるだけの状態が続いた、やがて獅子神は痛みに耐えきれず意識を失ってしまい、そのまま気絶して倒れた。

「ハー、ハー」気絶したのを確認すると眞鍋もその場に倒れ込んだ、目線の先には眞鍋を差し込む太陽光が空に昇っていた、しばらく眞鍋は疲労の影響でそのまま地面に倒れながら目を瞑った、そして五分後、誰かがこちらの名前を呼ぶ声が聞こえてきた、その声は随分聞き馴染みのある声だ、「眞鍋!しっかりしろ!眞鍋!」ふと目を開けるとそこには警部の羽鳥がいた、「大丈夫か!」そう言うと羽鳥の後ろに次々と警官達が集まりだし、眞鍋と市川を担架へと乗せていった、「羽鳥さん、奴は」 「関武連合の幹部だろ、全く勝手に失踪しやがって、何より無事で安心したよ、後はこちらに任せてゆっくり休め」そう話すと羽鳥は現場へと去ってしまった、眞鍋は救急車の中へ運ばれ、担架で横になっていると、突然携帯が鳴り出した、通話の相手は非通知からだ、「もしもし」恐る恐る話し出すと「時間切れだ、刑事さん」その声を聞いた瞬間恐怖を憶えた、神田組、現在は組長になっている松岡かの声だ、「松岡、お前らの憎い相手はこれからブタ箱に入れてやる所だ、条件は満たしたはずだ!」すると電話の奥から薄い笑い声が聞こえてきた、「あんたは随分と時間がかかりすぎた、今から抗争を起こさせて貰う」そう呟くと松岡は携帯を離し、隣の組員に伝えた、するとすぐに組員は車から降り後の道路へと止まるトラックの方へと駆け寄った、「襲撃開始だ!」組員が叫び出すと一斉にトラックの中に乗っていた神田組員が飛び出してきた、皆が武装しており次々と事務所や白岩組が仕切っているクラブへと入っていった、「待て!松岡!話しが違うだろ、獅子神を仕留めれば戦争からは手を引くと言ってたろが!」眞鍋は電話越しに怒りを訴えた、「待てない性分がヤクザなんだ、あんたともこれで終わりだ」そう呟くと松岡からの通話は切れた、「大丈夫ですか?」近くにいた救急隊員が眞鍋の反応を見て思わず声をかけた、するとやけに眞鍋は通話の時より冷静になった、「すいません、心配ありません。」

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