ベイクドベイクンベイベアーチーズケーキ

エリー.ファー

ベイクドベイクンベイベアーチーズケーキ

 私はチーズケーキが好きだ。

 何よりも好きだ。

 いつか、チーズケーキの海に溺れて死にたいと思っている。

 いや、今のは言い過ぎた。

 でも、チーズケーキの海を眺めてみたい気持ちにはなる。

 多くの人にとってチーズケーキは美味しいデザートくらいのものだろう。もちろん、それ以上の感情を持ち合わせている人もいるかもしれないが、私ほどではないと思う。

 特に証拠もないが。

 私の中にある熱量を、確固たるものとして、目の前に提示できないのが歯がゆいが。

 もちろん、苺のショートケーキであってはいけない。あれは、外道だ。フルーツが入っている。それでは、ケーキとして美味しいのか、という判断が難しくなってしまう。

 あくまで、そう。

 ケーキ自体の魅力に近いものでなければならない。

 だから、チーズケーキなのだ。

 私はそれなりに美味しいチーズケーキのことを、ベイクドベアーチーズケーキと呼んでいる。

 それよりも、もう一段階美味しさのレベルが上がった場合はベイクドベイクンベアーチーズケーキとなる。

 そして、最高のチーズケーキのことを。

 ベイクドベイクンベイベアーチーズケーキと呼ぶのだ。

 別に、何か明確な定義があるわけでもないし、私の中の基準も曖昧もいいところである。

 しかし、この、ベイクドベイクンベイベアーチーズケーキは、一口食べれば分かるのだ。

 あぁ、これこそ、私が求めている至高のチーズケーキ。

 ベイクドベイクンベイベアーチーズケーキ、であると。

 今のところ、私の人生で出会った回数は四回である。

 しかし、その四回とも完食することができなかった。

 どれも、最後まで食べるのをもったいなく感じてしまうのである。

 そのせいで、冷蔵庫に保管し続けて腐らせてしまったり、誰かに食べられてしまったり。

 結局、私は完璧に味わったことなどない。

 時折、考えることがある。

 私はチーズケーキを作ったことがない。

 ここまで、深くチーズケーキを愛しているのであれば、作るのも一興。

 しかし、私はまたも作らない。

 材料を買いそろえる気も起きない。

 チーズケーキをは食べるものであって、作るものではないのだ。

 多くの人に、チーズケーキの作り方を聞いたこともあった。ノートにまとめたことすらあった。

 けれど、そのノートも誰かに渡してしまったか、廃棄してしまったか。

 記憶も定かではない。

 私は今は消えてしまった文化の中で、自分の体重を探している。

 何を知っていて、何を知らないでいるべきか。

 そんな、無意味な取捨選択の結果、特にこだわりもないはずの人生をがんじがらめにして、チーズケーキに近づく切っ掛けを失い続けた日常。

 いつになったら、私は本物のチーズケーキに出会えるのだろう。

 いつになったら、私はチーズケーキを自分の手で作ってみようと思い、実行するのだろう。

 いつになったら、私はチーズケーキを忘れるのだろう。

 いつになったら、私はチーズケーキを嫌いになるのだろう。

 チーズケーキに呪われているとは思わない。けれど、私は私の怠惰に完全に支配されてしまった。

 誰にチーズケーキを作らせるか、そして、誰が作ったチーズケーキを食べるのか。

 王様となったこの身に付属している分厚い舌には、安価なチーズケーキは合わなくなってしまったのだ。

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