第4話 邂逅

一通りの挨拶は済ませた。


悪い!森野ちゃん、新患の入院受けてもらえない?

呼ばれたのは、新人の時にお世話になった

先輩の川島さんだった。

彼女は看護師の鑑と言うより人として尊敬できると思える指導者だった。


川島さん!また、宜しくお願いします。

入院ですね。

わかりました。


ありがとう、助かるわ。

簡単に情報伝えておくわね。

14歳、男児。名前は神川ガクホさん。

左下腿の痛みの訴えがあり受診。

CTで腫瘍が認められたのよ。

とりあえず、検査目的と説明してあると

外来からの引き継ぎがあったわ。

わかっていると思うけど、お母さんも一緒だからね。


はい。気をつけます。


そうしていると、ステーションに親子がやって来た。

母親は明らかに不安な様子、落ち着きをなくして息子やたらと、大丈夫よと繰り返している。

患児と言えば、そんな母親に対して反応もせずに物珍しいのだろう、あちこちに視線を

動かしていた。


病室は505号室です。

四人のお部屋です。

あっ、ここだけは先にお伝えしときますね。

おトイレですよ。


あっ、あの看護師さん、私ったらおトイレ行きたかったの。何だか、ぽーっとしてて。

いいですか?


リンコは母親の表情から感情が抑えきれないのを察した。

取り乱した姿を息子に見せたくないのだろう。

我慢の限界なのだろう。


はい。膀胱炎になっちゃうといけませんよ。

お母さん、ゆっくりーとおトイレしてくださいね。

私はガクホ君と一緒に先にお部屋に行ってますね。

じゃあ、行きましょう、ガクホ君。


うん。

彼は少し瞳に不安な色を見せながら、歩き始めた。







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