動物達しか知らない世界

とらさん

『動物達しか知らない世界』

ある所に、生まれる前の動物達がいました。


ここは、生まれる前の動物達が、体の使い方や動物らしさを教えてもらう場所です。


走り回ったり、泳いだり、飛んだり。

皆好き勝手に遊んでいました。


どれだけの時間が過ぎたでしょう。ここには”時計”がありません。

とても長い時間を過ごした気もするし、あっという間のようにも感じていました。


皆だんだんその動物らしくなり、自分を誇りに思うようになっていました。

けれど、何か物足りない。動物には、生きているという実感が必要なのです。

早く”世界”に生まれたくて、皆うずうずしていました。


ある時、神様が皆を呼び出して言いました。

「皆、そろそろ生まれる頃だ。皆がもう世界に生まれ落ちても大丈夫か、私に見せてくれるかい。この扉を通ったら、君たちは命を宿して誕生する」


神様の後ろには、大きな扉がありました。


皆、ここでお別れだと気付いて寂しくなりましたが、ずっと夢見ていた世界に行ける喜びの方が、強くなっていました。



ワンワン。

犬くんが真っ先に神様の所へ走って行きました。

「犬くん。私からの最初で最後の質問だ」


「君は、何になりたい?」

驚きながらも、犬くんは元気に答えました。

「ぼくは、警察官になりたいです。ぼくの鼻で、皆の探し物を探したり、悪いやつを捕まえて、皆を守りたいです」


神様は嬉しそうでした。

「素敵な夢だ。君ならきっとなれる。行きなさい」

犬くんは大喜びで、扉の中へ入っていきました。


「君は、何がしたい?」

「おれは、バナナを作る農家さんになりたいです。おれは木登りが得意で、バナナが大好きだから、たくさん植えて好きなだけ食べたいです。そして、そのバナナで皆を喜ばせたいです」

「楽しい夢だね。好きなことをするのは素敵なことだ。行きなさい」

猿くんも入っていきました。

皆、自分の得意なことや好きなことを活かして答えていました。


「消防士」

「看護師さん」

「本屋さん」

神様が褒めてくれるから、皆どんどん夢を答えていきました。



1匹を除いて。


皆答えていなくなり、ついに最後の1匹となりました。


神様は残った最後の動物の所へ行き、質問しました。


「君の夢は何だい」


「・・・」

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